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日本は飲酒運転の罰則が厳しいことで知られています。正常にアルコールを代謝できる人であれば、運転前に少量のアルコールを摂取していても問題ないという国もありますが、日本はまったくそうではありません。呼気に少量のアルコールが検出されるだけで飲酒運転と判断されて重い罰則が科せられる上に、最も軽い処分でも即免許停止になるほどの違反点数が加算されます。しかも運転手だけでなく同乗者にも罰則があるという徹底ぶり。今回はそんな日本の飲酒運転に対する罰則や行政処分の内容を詳しく見ていきましょう。
飲酒運転とは?
俗にいう「飲酒運転」とは、飲酒をしてアルコールの影響がある状態で乗り物を運転すること。そして「乗り物」とは自動車やバイクだけでなく、船舶、飛行機、鉄道車両なども全て含みます。ただし、日本に来て船舶や飛行機を運転する機会のある人はあまりいないので、飲酒運転と言えばほとんどの場合自動車やバイクの運転に関することと思っていいでしょう。忘れてはいけないのは、飲酒運転には酒に酔って自転車を運転した場合も含まれます。
飲酒運転には2通りある
一般的には「飲酒運転」と一口に呼ばれることが多いですが、厳密に言えば「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の2通りに分かれています。
- 酒酔い運転:呼気中アルコール濃度の検知値に関わらず、酒に酔った状態で運転に支障をきたしている。ふらつかずに直線上を歩けるか、視覚が正常か、言動や認知能力に問題がないかなどを警察官が確認して判定する。
- 酒気帯び運転:呼気中アルコール濃度が0.15 mg以上。0.25mg以上含まれている場合はより重い罰則を科される。
飲酒運転の罰則と違反点数(自動車・バイク・原動機付自転車など)
日本の飲酒運転の処分の何がそんなに厳しいかと言えば、運転者への処分はもちろんのこと、車両提供者や飲酒運転者に酒類を提供した人、同乗者にも罰則が及ぶという点です。この罰則と免許の違反点数は自動車、バイク、原動機付自転車など運転するのに免許が必要な車両に共通です。
運転者の処分
罰則 |
酒酔い運転 |
5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
酒気帯び運転 |
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
違反点数 |
酒酔い運転 |
35点 |
酒気帯び運転(呼気1L中のアルコール濃度0.25mg以上) |
25点 |
|
酒気帯び運転(呼気1L中のアルコール濃度0.15mg以上0.25mg未満) |
13点 |
ちなみに、過去に一度も交通違反の前歴のない人が上記の違反点数を科された場合、次のような扱いになります。違反前歴がある人はさらに重い処分があります。
- 酒酔い運転 35点:免許取り消し3年(5年間再取得不可)
- 酒気帯び運転(呼気アルコール濃度0.25mg/L≤): 免許取り消し(2年間再取得不可)
- 酒気帯び運転(呼気アルコール濃度0.15mg≤0.25mg>): 免許停止90日
車両提供者の処分
運転者が酒酔い運転 |
5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
運転者が酒気帯び運転 |
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
酒類の提供者/車両の同乗者の処分
運転者が酒酔い運転 |
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
運転者が酒気帯び運転 |
2年以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
上記は事故を起こしていない状態で警察官によって検挙された場合の行政処分です。万が一、アルコールの影響を受けた状態で車両を運転して第三者に怪我をさせたり死亡させたりした場合は、危険運転致死傷罪に該当し刑事罰の対象になります。
飲酒運転の罰則(自転車)
前述のとおり、飲酒運転は自動車だけではなく自転車の運転にも当てはまります。道路交通法第65条1項には「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」とありますが、この車両等には自転車も含まれています。つまり、自転車の飲酒運転ははっきりと法律で禁止されています。
自転車の飲酒運転が自動車のそれと大きく違うのは、自転車の飲酒運転は「酒酔い運転」の場合のみ罰則があるという点です。罰則の内容は自動車の飲酒運転で運転者に課される内容と同等です。
自転車の酒酔い運転 |
5年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
自転車の酒気帯び運転に罰則はありませんが、危険であることには変わりないのでお酒を飲んで自転車に乗るのはやめましょう。また、自転車に乗るのに免許は必要ないので自動車やバイクのように免許の違反点数を科されることはありません。しかし、自動車運転免許証を持っている人が酒に酔って自転車に乗り、あまりに悪質な危険行為をした場合は自動車の運転に適さないと判断されて、自動車免許を取り消されることもあります。
まとめ
日本で飲酒運転に対する罰則ができたのは1970年のことでした。今と比べると非常に軽い罰則でしたが、飲酒運転による事故が増えるにつれ、1990年代から厳罰化がすすめられるようになりました。2000年代に入ってからさらに厳罰化が加速し、2007年と2009年の改訂で現在の罰則になりました。自動車などでは飲酒運転で検挙されると最も軽くても免許停止となるなど、非常に厳しいものです。また、自動車やバイクだけでなく船舶、飛行機、免許の要らない自転車の運転にも適用されます。飲酒運転はこのように生活に支障をきたすほどの行政処分が下る深刻な違反行為であると同時に、他者を傷つけるかもしれない危険行為です。日本に限らずですが、お酒を飲んだら運転しないを徹底しましょう。