富山県の春の風物詩、青の幻想世界「ホタルイカの身投げ」

ホタルイカの身投げ

photo by odditycentral

突然ですがみなさん、ホタルイカを知っていますか?兵庫県や富山県の名産品で、春の味覚として色々な料理として日本の食卓に登場しているあの小さなイカです。おいしい食材として以外にも、特に富山県ではホタルイカ漁が行われる3月~5月の間に、発光する無数のホタルイカによって富山湾岸の浜辺が青く染まる、「ホタルイカの身投げ」という光景が見られます。昔は地元で春の風物詩として楽しまれていたものが、近年ではその知名度がぐっと上がり、日本全国や海外から多数の観光客が見に訪れるようになりました。無数の青い光に縁どられた海岸線が、幻想的な光景を作り出すこの「ホタルイカの身投げ」ですが、いつ、どんな場所で見られるのでしょうか?

 

ホタルイカについて

ホタルイカ

photo by wikipedia

ホタルイカは全長7㎝ほどの小さなイカで、触手の先や体表についた無数の発光器から、青白く美しい光を放つのが特徴的です。遭遇した敵を脅すためや、夜間に海上からの光に紛れ、海底にいる敵から自身の姿を見えなくするために発光するものと考えられています。ホタルイカの仲間は世界にも多種が生息していますが、日本周辺では主に日本海全域と、太平洋側の一部の地域に生息しています。特に富山県の富山市から魚津市にかけての富山湾沿岸は、ホタルイカの代表的な産地として有名で、毎年産卵期の春にはホタルイカ漁が盛んに行われています。とれたホタルイカは、現在では主に食用として佃煮や揚げ物、生食用と様々な料理に登場しますが、ホタルイカは非常に足の速い食材であるため、輸送や流通が発達する前は、松の肥料としても多く使用されていました。

 

「ホタルイカの身投げ」とは

ホタルイカの名産地である富山県の富山湾は、毎年春の風物詩である「ホタルイカの身投げ」を見るために集まった、沢山の地元の人や観光客たちで賑わいます。耳慣れないと「イカが身投げ?」と疑問に思う方もいると思いますが、実はこれ、毎年3月~5月のホタルイカの産卵期中の条件がそろった日のみ、無数のイカが大挙して富山湾内の海岸に押し寄せる、という現象なのです。日中は海中200~700m辺りに潜って生息しているホタルイカが、夜になると海面に浮かび上がってきます。これが産卵期には卵を浜辺に産み付けるために、さらに海岸近くに集まってくるのです。青い光を放ちながら無数のホタルイカが海岸へ集まる様子は、さながら光のベルトのよう。夜の闇に浮かぶ幻想的なイルミネーションは一見の価値ありです。
なお「ホタルイカの身投げ」を見ることができるのは、日本全国でもこの富山県の富山湾のみ、しかも水橋から魚津までの約15kmだけ。おまけに毎日見られるものではなく、条件がそろった日にしか見られないという、非常に貴重な光景なのです。

場所は「採れる場所はこの海岸と漁港だ!」を参考にしてください。

 

ホタルイカの身投げのベストシーズンと条件

「ホタルイカの身投げ」のシーズンは産卵期である毎年3月~5月ですが、この期間中であればいつでも見られる、というわけではありません。産卵という生物にとって非常にデリケートなイベントによって起こる現象だけに、様々な条件がそろった日でなければ見ることができないのです。オーロラみたいですね!しかもその条件というのも諸説あり、これといった絶対条件があるわけではないのです。しかし、地元では下記の条件が揃ったときに起こりやすいと言われています。

  • 月明かりのない新月前後
  • 深夜から未明にかけて満潮になる日
  • 波がおだやかな日
  • 晴れていて海中が泥や淡水で濁っていない日
  • 陸から沖に向けて南風が吹く日

※2016年4月~5月は、4月7日 20:25、5月7日04:30が新月です。

このような条件が揃う日に、なぜ沢山のホタルイカが海岸に押し寄せるのか理由ははっきりとは解っていませんが、一説によるとホタルイカは月明かりを頼りに位置を掴んでいるため、新月で月がない夜は方向を見失い、浅瀬に向かって波にさらわれるのではないかと言われています。

 

その他の楽しみかた

「身投げ」を見学する以外にも、3月~5月中は様々なホタルイカの楽しみかたがあります。

ホタルイカすくい

photo by nisimoto

ホタルイカが産卵のため海岸に押し寄せる「ホタルイカの身投げ」の日には、イカ漁がさかんな滑川市を中心とした海岸や漁港で、一般の人も網などでホタルイカをすくって楽しむことができます。ホタルイカすくいには、漁業権などのライセンスは不要です。地元の釣具屋さんなどでおすすめスポットなどを把握しているので、情報を仕入れてからトライしてみるといいでしょう。

ほたるいか海上観光

ほたるいか海上観光photo by namerikawa-kankou

ホタルイカの漁獲シーズンである3月下旬から5月上旬の約1か月のみ、漁船が定置網にて漁をする様子を観光船から見学することができます。出港は朝3時とかなり早朝ですが、年間を通じてこの時期にしか見ることのできないなかなか興味深い光景。事前に電話予約が必要です。

ほたるいか海上観光

ほたるいかミュージアム

ほたるいかミュージアム

photo by hotaruikamuseum

運悪くホタルイカの身投げを見逃したという人も、このほたるいかミュージアムで「ホタルイカの発光ライブショー」を見ることができます。ここでは特殊水槽に入れられたホタルイカの網を揺らして振動を与え、その発光を見学することができるほか、映像などでその生体や漁の様子を学ぶこともできます。

ほたるいかミュージアム発光ライブショー
期間:2016年3月19日〜2016年5月下旬
入館料: 大人800円/小人400円

 

おわりに

1年の間のほんのわずかな期間、しかもそのうちの数日しか見ることができない「ホタルイカの身投げ」。ぜひ実際にこの目で鑑賞してみたいものですね。時期は春ですが、見られる時間帯は深夜から未明とあって気温はかなり低めです。見に行く際は防寒着を忘れずに!また、ホタルイカのシーズン中、特に新月の時期は人出が一気に多くなり混雑すると思われます。公共マナーにも気を付けて、楽しく「ホタルイカの身投げ」を鑑賞してください。

 

 

あきらことほ

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あきらことほ あきら ことほ

日本を離れて11年。帰国の度に日本のいいとこ再発見。このコラムが皆様の「日本のいいとこ発見」のお役に立てればウレシイです!

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