日本に学びに来ている留学生の皆さん、国民年金には加入していますか?海外からの留学生を含む日本国内に住む全ての人は、20歳になった時から国民年金に加入する義務があります。そして、学生であれば保険料を納めることが猶予される「学生納付特例」という制度を利用することができます。「人生のもしも」を支える重要な社会保障制度を、簡単な手続きで保険料を払わずに受けることができるのですから、利用しない手はありません。ここでは「学生納付特例」の対象となるのがどんな人か、どのような条件で利用できるかをご説明します。
国民年金の「学生納付特例」を利用する意味
日本の国民年金の制度では、国籍に関係なく日本に住所のある20歳以上60歳未満の人全てが国民年金に加入しなければならないと定められています。それは留学生でも例外ではありません。しかし、苦しい生活費の中から国民年金保険料を捻出するのは簡単なことではありません。その為についつい未納のままで時間が過ぎてしまっている……という人も少なくないというのが実際のところです。また、いずれは母国に帰る予定で、老後に年金を受け取るつもりがないのだから、払う必要はないのでは?という意識がある人もいるでしょう。でも、老齢年金のことは一旦おいておいて、留学中に例えば交通事故に遭ってしまったり、病気で一定の障害を負った時にはどうなるでしょうか。そういった不慮の事故や病気の際、国民年金に加入してさえいれば障害基礎年金を受け取ることができます。そして国民年金には、留学生を含む学生の場合、一定の条件を満たしていれば保険料を納めることが猶予される「学生納付特例」という制度が用意されています。つまり、「学生なので支払いを猶予して下さい」という旨を手間を惜しまずにしっかりと申請しておけば保険料を支払わずしていざという時には手厚い保障を受けることができるのです。
「学生納付特例」の対象者
本人の所得が一定以下の学生が対象となります。学生とは、大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、専修学校及び各種学校、一部の海外大学の日本分校(※)に在学する人で、夜間・定時制課程や通信課程の方も含まれます。ほとんどの学生の人が制度を利用できると考えて問題ありませんが、科目等履修生、研究生、交換留学生等の在籍期間が1年未満の留学生は対象となりませんので、「若年者納付猶予制度」などの別の免除制度を利用しましょう。
※テンプル大学ジャパンの一部の課程、レイクランド大学ジャパンキャンパス、専修学校ロシア極東大函館校、天津中医薬大学中薬学院日本校、国際連合大学、アライアント国際大学、カリフォルニア臨床心理大学院日本校、北京語言大学東京校の一部の課程、マギル大学ジャパンの一部の課程が該当します。
「学生納付特例」の所得制限
留学生の中にはアルバイトなどである程度の所得がある人も多いかと思いますが、「所得が一定以下」というのはどのぐらいかというと、本人に扶養家族がいない場合は前年の所得が118万円以下となります。留学してきた最初の年については、日本国内での前年度の所得がないので、基本的には誰でも条件をクリアしている状態です。2年目以降については、申請にあたっては自分の昨年の所得を確認しておきましょう。ちなみに「所得」とはアルバイト代として受け取った金額そのものではないのでご注意を。一般的には収入から必要経費を差し引いて計算した金額を「所得」と呼びますが、アルバイト代からは概算の必要経費として給与所得控除(65万円)などを差し引くことができるので、ざっくり194万円前後までは条件を満たすことになります。所得が理由で自分が制度の対象者かどうか不安な場合は、源泉徴収票等を持参して申請時に相談すると安心です。なお、本人の家族の所得が多いか少ないかは問われません。
「学生納付特例」の申請方法
まずは申請書を入手します。お住まいの市区役所・町村役場の国民年金窓口や年金事務所に直接出向いて貰いにいく他、日本年金機構ホームページでも入手可能です。申請書に記入し、住民票を登録している役所・役場の国民年金窓口へ提出します。郵送でも受け付けているので、内容に特に不安がない場合は添付書類ごと封筒に入れて送ってしまった方が手間がかかりません。申請には国民年金手帳、有効期間が表記された学生証か在学証明書が必要です。学生証はコピーで構いませんが在学証明書は原本を提出します。学生証は裏面に有効期限、学年、入学年月日の記載がある場合は裏面もコピーしておきましょう。学生納付特例の審査の対象となるのは、申請日にかかわらず、4月から翌年3月までの期間です(1月から3月の間に申請した場合は、前年4月から3月までが対象となります)。ただし4月に申請する場合に限り、その前の年の4月から3月分までの期間(前年度分)についても申請が可能です。もし2年分まとめて申請したい場合は、申請書を1年ごとに分けて2枚提出することになります。審査が済むと日本年金機構から「承認通知書」または「却下通知書」が届きます。
手続きをしないとどうなる?
年金は老後に受け取る老齢年金だけではありません。万が一、病気や怪我などで障害が残ってしまった時の為に、障害基礎年金という制度が用意されています。障害基礎年金の金額(年額)は以下の通りです。
1級(常に介助を受けながら生活しているような障害の重い人)
975,100円
2級(日常生活に大きな支障はあっても、常に介助を必要とする状態ではない人)
780,100円
この障害基礎年金は日本国内にいる場合だけではなく、本国に帰国してからも、障害の状態が続いている限りはずっと社会保険庁から年6回に分けて送金されます。また、あまり考えたくないことですが、不慮の事故などで本人が死亡した場合には、遺された家族に対して遺族基礎年金が同様に支払われます。「学生納付特例」の申請さえしておけば受け取れたはずのこれらの年金を、制度について知らなかったり知っていてもつい先延ばしにしていたりして保険料を未納のままにしておくと、同じ「保険料を支払っていない状態」であるにもかかわらず、一切受けることができなくなってしまいます。
まとめ
保険や年金の関係の手続きは、日々の忙しさに紛れてつい先延ばしにしてしまいがちなもの。しかし、紙を1枚提出したかしないかでこれほどの違いが出てしまうのであれば、制度を利用しないなんて勿体無いということは明らかです。何となく未納のままで過ごしてきてしまった、あるいはそもそも自分が年金の申し込みをしているかどうかすらわからないという留学生の方は、ただちに自分の年金の状況をお寄りの年金窓口で確認してみることをおすすめします。もしもの時の安心のために、「学生納付特例」の制度の対象者であるならぜひ利用しましょう。
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