海外戦略の第一歩。外国人インターンを受入れる為の手続きとは

internship

海外の優秀な学生を日本に招いてビジネス経験を積んでもらう「インターンシップ」は、今や期間の長短を問わず広く普及しています。学生が異国の地で実際の業務に触れ、社会経験を積むことによって、学生個人の良い経験になるだけでなく、受け入れ企業にとっても外国人採用の下地作りや外国人対応力の向上などの多くのメリットが期待できます。しかし、受け入れ側としては手続きの件などで戸惑う部分が多いのも事実です。今回は、外国人インターンシップが初めての会社でも少しでもスムーズな受け入れができるように、インターンシップに必要なビザの種類などの基本情報を整理してお伝えします。

 

インターンシップとは

日本国内の企業が海外の大学との間で契約を結び、その大学に在籍する外国人学生を日本に招いて働いてもらうことをインターンシップといいます。社会の国際化に伴って外国人採用のニーズは高まっており、日本国内でもインターンシップを取り入れる企業は年々増加しています。ただし、インターンシップの目的はあくまでも学生に向けた研修・教育です。大学と企業が提携して、大学の教育課程の一部として行われるもので、インターンシップ終了後には単位として認定もされます。そのため、大学で専攻している分野とインターンシップとして行う業務の内容が重なっていなければビザが下りない可能性があります。労働力不足の解消のために行われるようなものではなく、かといって「異文化の中での生活を体験しながら勉強や仕事など好きな過ごし方ができる」というワーキングホリデーとも全く性質が違うことに注意しましょう。日本の企業がインターンシップ採用で海外から外国人学生を招く場合、必要になるビザは報酬の有無や期間によって3種類に分かれます。これから、それぞれについて項目を分けてご説明します。

 

ケース1:報酬あり、滞在期間1年以内

  • インターンシップの予定期間が1年以内
  • 会社からインターンシップ中の報酬(給与)が支払われる
  • ビザの種類:特定活動
  • 企業側が日本の入国管理局で「在留資格認定証明書交付申請」を行ってビザを取得

就労の対価として報酬が発生する場合はこのケースが該当します。事前に受け入れ企業と海外の大学との間でインターンシップ契約が締結され、その契約書にしっかりと就労する業務や期間、報酬が明記されていなければなりません。なお支払われる報酬については上限や下限はありませんが、所得税の課税対象になり、所得税法上の「非居住者」(1年未満の日本滞在が見込まれる者)として20%の源泉徴収を行う必要があります。インターンシップは原則的に外国人学生が通う大学の教育課程の一環として行われるものですが、大学の夏季休暇などを利用した3か月を超えない期間であれば、単位取得を伴わなくても「サマージョブ」という形で認められています。その場合も該当するビザは「特定活動」になります。

 

ケース2:報酬なし、滞在期間90日以上

  • インターンシップの予定期間が90日を超える
  • 会社からインターンシップ中の報酬(給与)が支払われない
  • ビザの種類:文化活動
  • 企業側が日本の入国管理局で「在留資格認定証明書交付申請」を行ってビザを取得する

就労の対価として報酬が発生せず、長期にわたる期間の場合はこのケースが該当します。無報酬といっても、家賃補助などの住居費、渡航費、現地交通費、海外保険費、食費などの補助は支払い可能です。これらの賃金に当たらない実費(所得税法上は非課税の取り扱い)を会社から出したとしても、無報酬という扱いで問題ありません。労働者としての報酬が発生しないので、労働保険や社会保険は基本的には適用されません。

 

ケース3:報酬なし、滞在期間90日以内

  • インターンシップの予定期間が90日を超えない
  • 会社からインターンシップ中の報酬(給与)が支払われない
  • ビザの種類:短期滞在
  • いわゆる「観光ビザ」で、ビザ免除国であれば申請は不要。免除国ではない場合、学生が日本国外の日本大使館・領事館などで申請する。

就労の対価として報酬が発生せず、短期間で終了する場合はこのケースが該当します。ケース2と同じく、住居費、渡航費、現地交通費、海外保険費、食費などの補助は報酬には含まれず、労働保険や社会保険の適用も基本的にありません。

 

インターンシップの期間

インターンシップとして活動できる期間は「1年を超えない期間で、かつ通算して当該大学の修業年限の2分の1を超えない期間内」と定められています。つまり2年制大学の生徒ならインターンシップで活動可能な期間は通算して1年間、4年制大学の生徒なら通算して2年間です。ただし「1年を超えない期間」とある通り、2年間を通して在留することは認められていません。4年制の大学に在籍する学生の場合は、「特定活動」の在留資格で1年間のインターンシップを終えた後は帰国して母国の大学での学生生活を再開する必要がありますが、その後、1年を超えない別のインターンシップのために再度「特定活動」の在留資格で入国・在留することは問題ありません。なお報酬が発生しないインターンシップで「文化活動」の在留資格を利用する場合、このビザは最長1年と定められているので、4年制大学の生徒であっても活動が認められるのは1年間だけです。

 

インターンシップに関連する手続き

日本での滞在日数が90日を超える場合は、在留カードが発行され、外国人でも住民登録をする義務があります。来日後、まずは日本で住む市区町村の役所で住民登録の手続きを行いましょう。住民登録が完了した時点で国民健康保険に加入できる資格が与えられるので、同時に国民健康保険への加入も済ませておきます(要件を満たしており会社の社会保険に加入する場合を除く)。通勤中や勤務中に万一のことがあった場合を考慮して、大学側の手配で来日前に医療・損害賠償保険を含めた海外旅行損害保険に加入するケースも多くあります。滞在日数が90日以内であれば、旅行者と同じ立場なので在留カードの交付はなく、住所の登録なども必要ありません。

 

まとめ

大きな可能性を秘めたインターンシップ。参加する外国人学生が、日本のビジネスの世界を体験するだけでなく、日本の社会、文化への理解を一層深めてもらえるように、受け入れる企業側がきめ細やかなサポートをしていくことが大切です。在留資格の審査には2~3か月ほどかかることもあるので、余裕を持って手続を進めることをおすすめします。

 

 

磯山ゆきえ

この記事を書いた人

磯山ゆきえ 磯山 ゆきえ

気ままな海外一人旅が好きです。外から見たこの国の姿を意識しながら、日本に関する楽しい話題をお届けできたらと思っています。

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