古代から神々の島として日本人に敬われてきた宮島は、宮城県の松島、京都府の天橋立と並んで「日本三景」と称され、日本を象徴する名所となっています。特に世界文化遺産にも選ばれている厳島神社とその背後にそびえる弥山の荘厳な佇まいは、一度見たら忘れられない神秘的な魅力に満ちあふれており、宮島を訪れる外国人観光客の数は年々増え続けています。日本を訪れるなら外してはならない世界規模の景勝地、宮島の魅力をご紹介します。
世界から注目されている名所、宮島
美しい瀬戸内海に浮かぶ宮島は、広島県廿日市市に位置する周囲約30kmほどの小さな島です。正式な島の名前は「厳島(いつくしま)」ですが、お宮様(神社)が祭られていることから「宮島」と呼ばれるようになりました。近年では外国人観光客からの人気が高まり、tripadvisorによる「外国人に人気の日本の観光スポットランキング2016」でも3位にランクインするなど、同じ広島県内の原爆ドームや平和記念資料館と共に熱い注目を集めています。宮島の中でも特に人々を惹きつけているのは、海上に浮かぶ大鳥居と朱塗りの社殿の神々しさが見るものの心を奪う厳島神社です。潮の満ち引きを計算されて作られたと言われており、昼間と夜とでその表情をガラリと変えることも魅力の一つです。また、神社の背後に広がる標高535mの霊山「弥山(みせん)」には登山道やロープウェーが整備され、日本ならではの神秘と自然美を求める外国人にとって人気のスポットとなっています。春には桜、秋には紅葉など、四季折々の風景を楽しむことができ、訪れるたびに新たな感動を味わえます。
宮島へのアクセス
宮島は名前の通り海に浮かぶ島です。出発地点を東京とするなら、まずは新幹線か飛行機で広島に向かい、島への玄関となる宮島口へと移動して、フェリーに乗って宮島へと渡ることになります。東京から広島へは新幹線で約4時間、飛行機なら搭乗時間と広島駅までの移動で計3時間ほどです。広島駅からはJR山陽本線で宮島口へ向かい、フェリーへと乗り換えます。時間に余裕があるなら広島電鉄(路面電車)に乗って車窓の眺めを楽しみながら同じ宮島口へと向かうのも良いでしょう。宮島口からはフェリーに乗り換えて宮島桟橋へ向かいます。フェリーはJRと松大汽船の2種類があり、どちらに乗っても金額や時間は変わりませんが、JRの方が大鳥居の近くを通るので人気です。また、原爆ドームや平和記念資料館もあわせて観光するなら、原爆ドームのすぐ近くにある元安橋桟橋から世界遺産航路を利用するのも賢い方法です。多少交通費は高くなりますが、面倒な乗り換えなしで瀬戸内海の景色を楽しみながら移動できるので、効率よく名所を回りたい外国人観光客に人気のコースです。
宮島のシンボル、大鳥居
厳島神社の入り口にそびえる大鳥居は、宮島を象徴する存在といえます。現在見ることができる大鳥居は8代目で、明治時代に再建されたものです。実はこの大鳥居の根元は海底深く埋められているわけではなく、驚くことに自分の重みだけで建っています。宮島は島全体が神として敬われてきたため、厳島神社参拝のための鳥居を建てるにあたって「神様に杭を打つわけにはいかない」という理由から、自立式の赤い鳥居が海に建てられたそうです。潮が満ちている時なら船に乗って鳥居をくぐることが可能です。平安の時代には、船で海中の大鳥居を通り抜けて厳島神社に参拝する海上参拝が正式な参拝の作法だったと伝えられています。逆に干潮時には大鳥居の先まで潮が引くので、大鳥居のすぐ近くまで歩いて行くことができます。高さ約16メートルの大鳥居を真下から見上げてみると、その迫力に圧倒されることでしょう。
壮麗な朱塗りの社殿が印象的な厳島神社
海に浮かぶ神社として国内外に広く知られる厳島神社。創建は593年と言われ、後に平清盛が現在の規模に造営したとされます。実は日本で単体として世界文化遺産に登録されている神社は厳島神社しかありません。世界にもあまり例がない、海にせり出したような独特な造りになっているのは、大鳥居と同じくご神体である島に直接建造物を作るのを避けたためと言われています。廻廊で結ばれた朱塗りの社殿を潮が満ちる頃に歩いていると、通路のすぐ近くまで海面が近づき、まるで海の中を歩いているかのような不思議な感覚に包まれます。目に鮮やかな柱の赤、背後にそびえる弥山の緑、空や瀬戸の海の青とのコントラストは、日本人の美意識の基準ともなっています。なお厳島神社とその周辺では、日没30分後から午後11時ぐらいまで毎日ライトアップが行われています。満潮時には漆黒の海面に鏡のように神社の姿が映し出され、その幻想的な雰囲気に息を呑むはずです。
弥山の魅力1:宮島ロープウェーで獅子岩展望台へ
厳島神社だけでも見どころは十分なのですが、宮島の魅力をさらに味わいたいなら、もう少し足を伸ばして宮島の最高峰である標高535mの霊山「弥山」に登ってみましょう。天気に恵まれれば展望台から素晴らしい瀬戸内の多島美をパノラマで見ることができます。弥山には複数の登山ルートも整備されていますが、時間をかけずに登るには宮島ロープウェーの利用が手軽で便利です。ロープウェー乗り場は紅葉谷公園を抜けたところにあり、歩いて行くとやや時間がかかりますが、厳島神社の裏手から無料送迎バスが20分間隔で出ています。2種類のロープウェーを乗り継ぎ、終点である獅子岩駅を出て左手に進むとすぐに獅子岩展望台(標高430m)があります。断崖の上から青い瀬戸内海とたくさんの島々、港に出入りする船が一望できます。ここからの眺めだけも十分素晴らしいものですが、できればあと一息頑張って山頂まで歩くと、さらなる絶景が待ち受けています。所要時間は往復1時間で、距離はさほどありませんが、階段や坂のきつい山道なので歩きやすい靴を履いてきましょう。
弥山の魅力2:弥山山頂への散策コースと展望台
獅子岩駅から山頂までのコースは、最初に10分ほど下りのルートを歩いてから、その後は20分ほどの上り道となります。山頂までの中間地点に「弥山本堂」や、日本で唯一の鬼の神様を祀る「三鬼堂」などがあるので、少し休んでお参りしていくのがおすすめです。自然が創り出した巨岩のアーチ「くぐり岩」を抜けると山頂はもうすぐです。ゴール地点に立っているのは、2014年にリニューアルされた3階建ての綺麗な展望台です。3階から眺められる遮るものが何もない360度の大パノラマビューは、きっと忘れられない思い出となることでしょう。晴れた日には遠く四国連山も望めます。2階には腰掛けたり寝そべったりして過ごせるリラックススペースが用意されており、美しい海と島を眺めながら疲れた体を癒やすことができます。展望台でゆっくり過ごしてパワーチャージができたら、またロープウェー終点へと戻ります。なお山頂まで歩く場合は、帰りのロープウェーの時間を必ず確認して、余裕を持って動くことが大切です。最終便に乗り遅れてしまうと歩いて下山しなくてはなりません。
まとめ
潮の満ち引きで表情を変える、美しく神秘的な厳島神社。そしてロープウェーで空中散歩を楽しめ、豊かな自然と絶景で見るものを圧倒させる弥山。広島を訪れたなら、宮島まで渡ってぜひこの2つをとことん味わってみてください。宮島には牡蠣やあなごめし、焼きたてもみじ饅頭などグルメも充実しています。また、桟橋から厳島神社付近にかけては神の使いである鹿たちがのんびり歩いていて、愛らしい瞳を向けてくれます。ただし、どんなに可愛くても奈良の鹿とは違って餌を与えることが禁じられているので、ご注意ください。