鳥を使ってアユを取る?伝統漁「鵜飼」を見に行こう!

Comorant fishing

photo by Kentaro

毎年、アユ漁の解禁に合せて始まる日本の鵜飼。夜、かがり火を焚いた小舟の上で巧みに鵜を操る鵜匠の姿は、夏の風物詩のひとつです。炎に照らされた鵜匠と漕ぎ手の姿をよく見ると、風折烏帽子に腰みのと、なんとも古めかしい格好をしています。それもそのはず、鵜飼は日本で千年以上も行われてきた歴史の深い伝統漁業なのです。現在でも鵜飼が行われている地方は日本に10か所余りありますが、今回はその中でも代表的なものをご紹介します。

 

鵜飼とは

その歴史は古く、8世紀に編纂された「古事記」や「日本書紀」にすでに鵜飼についての記述があります。もっとも主流な方法は、夜、小舟の上で火を焚きながら船頭が舟を漕ぎ、鵜匠が5~10羽程度の鵜を操って川魚を捕獲するというもの。鵜の首周りには紐が結び付けられており、一定の大きさを超える魚は鵜に丸呑みされても喉を通らないようになっています。鵜匠は魚を飲み込んだ鵜を見つけると手早く引き上げて、舟上の魚籠に魚を吐き出させます。その他にも、鵜匠が少数の鵜を連れて川の浅瀬に徒歩で入って行う方法もあります。

もともと鵜飼は生計を立てるための漁法として広まっていったものですが、現在では限られた地方で観光客向けのショーとして行われることがほとんどです。例外として皇居や明治神宮、伊勢神宮などに奉納する鮎を取るために岐阜県で行われる「御料鵜飼」があります。また、現代の鵜飼はほぼアユ漁のみに用いられるため、開催される時期もアユ漁が解禁となる夏季(5月~10月ごろ)のみ行われます。

鵜飼鑑賞は特に前知識は必要ありませんが、鵜匠や船頭などそれぞれの役割を知っておくとさらに楽しむことができます。

鵜匠

船の舳先に立って鵜に繋いだ手縄を操って漁を行います。手には10程の手縄を握りながら縄同士が絡まないようにさばいたり、手縄を抑え込んで鵜の動きを調整し、魚を飲み込んだ鵜を引き上げたりします。鵜を操るのに熟練の技術が要求される、非常に難しい役割です。

船頭

川の流れや風向きを読みながら、鵜匠が漁をしやすいように船を漕ぎます。

鵜は非常に人に慣れやすい種類の鳥です。漁に使用される鵜は最初から飼育されたものでなく、海岸地域などで捕獲した野生のウミウを飼いならして鮎を取るようしつけます。獲った魚を丸呑みする習性があり、飲まれた魚は鵜の喉に占められて一瞬のうちに気絶してしまいます。そのため、魚の鮮度を保つことができるとされています。

かがり火

船の舳先につり下げられたかがり火は、川魚を照らして動きを活発にする働きをします。動きまわる川魚が光を反射し、それを見た鵜が次々と魚を捕獲します。

 

日本の三大鵜飼

長良川鵜飼(岐阜県岐阜市)

1300年の歴史を誇り、年8回の御料鵜飼も行われる長良川の鵜飼。鵜匠の熟練した技を観覧船から間近に見ることができます。毎年5月11日~10月15日の開催期間中は、1日休日があるほかは天候がよければ毎夜開催されます。貸切船は電話での予約になりますが、乗合船はインターネット予約が可能。スケジュールは毎夜18:15から30分ごとに船が出ますが、期間中8回行われる御料鵜飼の日は、一般観覧は20:30からのみになります。

長良川鵜飼

肱川鵜飼(愛媛県大洲市)

大洲の鵜飼の始まりについてははっきりと判明していませんが、遅くても江戸時代には鵜飼がさかんに行われていたとされています。明治以降、漁業としての鵜飼は衰退してしまったものの、昭和32年から地元の観光事業として再興され現在まで人気を博しています。大洲の鵜飼は屋形船で食事や川下りを楽しんだ後、鵜匠によるアユ漁を観賞するというもの。夜だけでなく、昼にも鵜飼を観賞できるのもこの地方の特徴です。

肱川鵜伝 大洲のうかい

三隈川鵜飼(大分県日田市)

日田市を流れる三隈川で行われる鵜飼は、今から約400年前に当時この地を統治していた武将が、岐阜から鵜飼を連れて来て娯楽のために始めたものが起源とされています。毎年5月下旬から10月下旬まで、三隈川周辺にある旅館やホテルが屋形船を出し、食事をしながら船の上から間近に鵜匠が鮎を捕らえる姿を見ることができます。予約は各宿泊施設が独自に受け付けているため、直接連絡が必要です。

日田温泉旅館組合

※全て要予約

 

京都の鵜飼

京都でも古くから鵜飼が行われており、夏の風物詩として平安時代の和歌にもたくさん詠まれています。現在では、宇治市の宇治川と嵐山の大堰川で毎年7月1日から9月下旬まで鵜飼が開催されています。貸切舟は事前予約が必要ですが、乗合舟は予約なしでも乗船することができます。

宇治川鵜飼(宇治)

期間:2017年7月1日~9月30日
乗船時間:7月1日~8月31日は19:00に出航(受付18:00)、9月1日~9月30日は18:30に出航(受付17:30)
料金(乗合舟):大人 2000円、小学生1000円
アクセス:
問合せ:宇治市観光協会 TEL 0774-23-3334

大堰川鵜飼(嵐山)

期間:2017年7月1日~9月23日
乗船時間:7月1日~8月31日(8月16日は除く)は19:00と20:00に出航、9月1日~9月23日は18:30と19:30に出航
料金(乗合舟):大人 1800円、子供(4~12歳) 900円
アクセス:阪急嵐山駅から南乗船場へ徒歩約10分/京福嵐山駅から北乗船場へ徒歩約10分/JR嵯峨嵐山駅から北乗船場へ徒歩約20分
問合せ:嵐山通船 TEL 075-861-0302

※鵜飼は大雨による川の増水や強風など悪天候の場合は中止になる場合があります。
※週末やお盆休暇中は特に混雑します。

 

まとめ

千年以上前から続く日本の鵜飼。捕まえた野鳥を操って魚を獲るなんて変わった漁法ですね。手縄をくって鵜を操る鵜匠の仕事は熟練した技術を要する高度なもの。みなさん鵜飼の師匠について長年修行を重ねてきた人たちばかりです。特に岐阜県長良川で鵜飼をする鵜匠たちは、世襲制で幼少のころから鵜飼に慣れ親しんできています。鮮やかな手さばきも納得ですね。同様の漁法は中国でも行われているようなので、自国の鵜飼を見たことがあるという人は違いを比べてみるのも楽しそうです。

 

 

あきらことほ

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あきらことほ あきら ことほ

日本を離れて11年。帰国の度に日本のいいとこ再発見。このコラムが皆様の「日本のいいとこ発見」のお役に立てればウレシイです!

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