泊まって学ぶ仏教。英語対応ができる4つの宿坊

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photo by Raphaël Thiémard

日本を観光先進国にすることを目標にした日本政府の積極的な取り組みによって、昨今急増している訪日観光客。宿不足が懸念されつつある中、ここ数年外国人観光客、特に西洋諸国からの観光客から大注目を集めているのが、寺社に宿泊する「宿坊」です。本来は僧侶や参拝者の宿泊施設でしたが、近年は観光客も宿泊できるところがほとんどで、しかも普通の宿泊施設とは違い本格的な修行体験もできるとあって急激に人気が高まっています。ただ、ホテルや旅館などサービス業ではないため、外国人にも解りやすい対応という点では少々遅れがちでした。実際に宿泊したという人も、予約は日本人の知り合いにお願いしたという人が多数。しかし、この宿坊人気を受けて外国人宿泊客にも日本仏教を知ってもらおうと、英語での対応に取り組む寺院が出てきています。今回は日本語が出来なくても、英語のコミュニケーションだけで安心して泊まれる宿坊をご紹介します。

 

高野山 恵光院(和歌山県)

真言密教の聖地として、今から1200年前に空海によって開かれた高野山。ここには総本山・金剛峯寺を筆頭にその子院が117院あり、そのうち52院が宿坊を営んでいます。高野山は近年外国人観光客からの関心が高まっており、宿坊への宿泊希望者が急増中。そのため高野山の宿坊では、いち早く外国人宿泊客への対応強化が進められてきました。中でも恵光院には英語の堪能な僧侶が数人おり、宿泊の案内から真言宗の教えまで丁寧な説明が受けられます。この宿坊で特に人気が高いのが「奥の院ナイトツアー」。僧侶の案内で夜の奥の院を参拝しながら、弘法大師について、真言密教について、奥の院の伝説、高野山の歴史などについての話を聞くことができます。その他阿字観や写経などの仏教体験プログラムも。問い合わせや予約は恵光院のホームページからオンラインで行うことができます。

恵光院
住所:和歌山県伊都郡高野町高野山497
TEL:0736-56-2514

 

高野山 無量光院(和歌山県)

恵光院と同じく高野山にある真言密教のお寺無量光院は、かねてから積極的に国際交流に取り組んでおり、日本国内だけでなく世界中から密教修行僧を受け入れてきました。中でも、このお寺で20年以上に渡って活動を続けておられるスイス出身のご住職は、日本語を含む数カ国語に堪能で、高野山の外国人僧侶の中でも特によく知られています。タイミングが合えば滞在中にお話を伺うことも可能。また、希望者は朝6時から1時間半に渡って行われる本格的な勤行に参加でき、読経や護摩業が行われるのを見学することができます。朝のお勤めに参加する際には、任意で心付けを渡します。宿泊に関する問い合わせや予約は、電話もしくはオンラインで受け付けています。

無量光院
住所:和歌山県伊都郡高野町高野山611
TEL:0736-56-2104

 

信貴山 玉蔵院(奈良県)

聖徳太子によって開かれた信貴山にある真言宗のお寺・朝護孫子寺。1100年以上の歴史を持つ朝護孫子寺には3つの宿坊があり、その中のひとつ玉蔵院では特に外国人宿泊客の受け入れに力をいれています。予約は日本語、英語、ドイツ語の3カ国語で受け付けており、到着した外国人宿泊客にはご住職や僧侶が英語で丁寧に対応してくれます。写経、写仏、阿息観や作務など様々な修行を体験することができ、宿坊に泊まる人は翌朝5時から行われる護摩業を見学することができます。このお寺の境内は広大で、玉蔵院以外にもたくさんの建物があります。境内を含む山全体が静謐な空気に満たされており、朝や夕暮れ時の散策もおすすめです。

玉蔵院
住所:奈良県生駒郡平群町信貴山2280
TEL:0745-72-2881

 

妙心寺 春光院(京都府)

「日本文化」と聞くと瞑想する禅僧の姿を思い浮かべる人もいるほど、典型的な日本のイメージと結びついているのが日本仏教の禅宗。京都市左京区にある臨済宗・妙心寺派の大本山妙心寺は、日本最大の禅寺として知られています。全国に数ある妙心寺派の寺院の中で、特に国際交流に力を入れているのがこちらの春光院。哲龍窟と名付けられた別館は宿坊として外国人のみを対象に開放されています。宿泊施設の各部屋にはトイレ、シャワー、冷暖房器具が完備、キッチンとダイニングは共同です。宿泊プランは素泊まりのみですが、別途、英語での座禅教室や所蔵する重要文化財ツアーなどに参加することができます。宿泊予約や見学会の申し込みなどは、国際交流担当者に電話、またはメールで問い合わせをします。

春光院
住所:京都市右京区花園妙心寺町42
TEL:075-462-5488

 

まとめ

歴史ある寺院を見学するだけでなく、そこへ泊って修行までできてしまう宿坊。あくまでも修行の場ですので、バスルームやトイレが共同であったり門限があったりと、ホテルや旅館のような快適なサービスは受けられないかもしれません。しかし、ただの観光旅行では得られない貴重な体験に魅了される人はとても多く、リピーターの数も毎年増えています。外国人宿泊客に対する対応の向上もこれからますます期待できますので、日本での宿選びに迷ったら、宿坊も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

 


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あきらことほ

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日本を離れて11年。帰国の度に日本のいいとこ再発見。このコラムが皆様の「日本のいいとこ発見」のお役に立てればウレシイです!

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