イタコの口寄せ。日本三大聖地「恐山」観光が結構人気らしい

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青森県下北半島にある霊場・恐山。地元では人の死後、魂はみなこの山へ向かうと言い伝えられており、全国的にも死者の山としてその名を知られています。そこここで火山ガスが噴出し、草一本生えていない様子はまさに地獄そのもの。と書くと、その名の通りなんだかとても恐ろしい場所のような気がしますが、実は由緒正しい信仰の場であると同時に、非常に美しい景色も見られる人気の観光名所なのです。

 

そもそも恐山とは

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photo by Herry Lawford

恐山は本州の最北端・下北半島にある霊場で、和歌山県の高野山、滋賀県の比叡山と並んで「日本三大霊山」と呼ばれることも。西暦862年に天台宗の祖である最澄の弟子・円仁によって開山されてから、主に死者への供養の場として人々に信仰されてきました。山地としての恐山は過去1万年の間噴火活動こそありませんが、境内の一部分には硫黄臭をともなう火山性ガスが充満しています。そのためエリア一帯には動物が生息しにくく、草木も生えることがありません。そのような荒涼とした景観が「地獄」に例えられ、境内に展示されています。また、地域周辺から湧き出る水も火山ガスの影響で生物が住むのに適さないために不純物が少なく、付近にある宇曽利湖や三途川も高い透明度を保っています。どことなくこの世のものではないような、不気味さと息をのむような美しさを兼ね備えた不思議な景観が人気を呼び、近年では外国人観光客からも人気の場所となっています。

 

恐山観光のポイント、地獄と極楽

恐山の境内には色々な種類の「地獄」が点在しているほか、菩提寺の敷地外にも三途川や宇曽利湖畔の極楽浜などがあります。それぞれの景色がどんな意味を持っているのか知っておくと、仏教に基づいた日本古来の死後の世界観や道徳観をより理解することができます。

三途川

日本ではよく、死を表現するのに「三途の川を渡る」という言い回しを使います。三途の川は現世とあの世の間を流れており、死者はこの川を渡って地獄や極楽へ行くとされています。恐山の総門手前にはこの川の名前を冠した「三途川」が流れており、参拝者は赤い太鼓橋を渡って菩提寺へと向かいます。

奪衣婆(だつえば)と懸衣爺(けんえおう)

三途川の傍にある2体の像。奪衣婆は死者の衣服をはぎ取り、懸衣爺がそのはぎ取った衣服を傍の木の枝にかけて、死者が生前に犯した罪の重さを測るとされています。

無間地獄

最もひどい責苦を負わされる地獄の最下層。生きている間に殺生、窃盗、殺人などの大罪を繰り返し犯した者がこの地獄に落とされるとされています。この地獄に落ちたものはありとあらゆる折檻に永遠に苦しめられることになります。

賽の河原

古来日本では親より早く亡くなることは、とてつもない親不孝とされてきました。賽の河原は親より先に死んだ子供が来る地獄で、子供たちは小石を積んで塔を完成させればここから出られるとされています。しかし、完成する前に必ず鬼がやってきて塔を破壊してしまうため、永遠に石を積まなくてはなりません。非常に理不尽な地獄ですが、最後には地蔵菩薩がやってきて救済があるということです。

風車

恐山ではいたる所で風車が風に吹かれて回っているのを目にします。これは亡くなった幼子の霊を慰めるために供えられたものです。

極楽浜

境内の地獄エリアを抜けると広がる宇曽利湖畔の浜辺。それまでの地獄の風景とは打って変わり、美しく澄み切った湖水と白い浜の美しさがまるで極楽のように見えます。

 

宿坊で仏教体験

日本語が得意だという人にぜひ体験してほしいのが、宿坊への宿泊。宿坊とはもともと僧侶や仏教を信仰する参拝者のための宿泊施設でしたが、観光のために訪れた宿泊者も受け入れています。恐山にある宿坊・吉祥閣は、非常にモダンな内装で見ただけではまるで一般にあるホテルと見紛うほどです。しかし、宿坊ですので通常のホテルとは違い食事時間や消灯時間が決められています(消灯後も自室の電灯をつけておくことは可能)。食事は宿泊客全員が同じ部屋に集い、僧侶の簡単な説法を聞いた後、食事に対する敬意を表すための「五観の偈」を唱和してから、美しく盛られた精進料理を戴きます。朝は6時半からお勤めに参加し、その後朝食。宿泊客は宿坊の大浴場と境内にある湯小屋で温泉を楽しむことができます。宿坊への宿泊のもう一つの魅力は、山門が閉まっている時間帯の人気のない恐山の景色をゆっくりと堪能できること。観光客のいない早朝と夕刻の寂々とした景色は、昼間の観光客でにぎわう恐山とは全く違った趣があるのです。

宿坊 吉祥閣
問合せ:0175-22-3825

 

イタコの口寄せ「恐山大祭」「恐山秋詣り」 

恐山では毎年7月20日~24日に「恐山大祭」、10月上旬の連休中に「恐山秋詣り」と大規模な祭典が2回開催されます。法要や祈祷、行列などがあり、毎年沢山の人たちが見物に訪れます。中でもひときわ注目を集めるのが、この地方で「イタコ」と呼ばれる巫女さんたちが行う口寄せです。口寄せとは死者の魂を呼び出してその言葉を伝える降霊術。大祭と秋詣りの期間中は近隣に住むイタコたちが恐山に集まり、口寄せをおこないます。今年の開催予定は下記の通りです。

恐山大祭:7月20日~24日
恐山秋詣り:10月7日~9日(2017年)

 

恐山へのアクセス・入山料

名称:恐山 伽羅陀山菩提寺
住所:青森県むつ市田名部字宇曽利山3-2
お問い合わせ:0175-22-3825
開山期間:5月1日~10月中旬 6:00~18:00/10月中旬~10月31日 6:00~17:00
※11月~4月は閉山
入山料:500円 
※恐山大祭・秋詣り期間中も同じ
アクセス:JR大湊線「下北駅」からバスで35分

 

まとめ

本州最果ての地にある恐山、そこはまさにあの世を体現したような不思議な世界。三途の川にかかる太鼓橋を渡り山門をくぐると、まるで死後の世界に足を踏み入れたかのような錯覚に陥ります。むつ市の観光名所ではありますが、供養や参拝のために訪れている人たちも沢山いますので、大きな声での会話は謹んで厳粛な気持ちで見学してください。

 

 

あきらことほ

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あきらことほ あきら ことほ

日本を離れて11年。帰国の度に日本のいいとこ再発見。このコラムが皆様の「日本のいいとこ発見」のお役に立てればウレシイです!

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