photo by MIKI Yoshihito
新型コロナウイルスの変異株・デルタの感染が確認されてから、日本でも急速に感染者数が増えています。特に東京・大阪をはじめとする大都市部では毎日1000人を超える新規感染が確認されており、今年前半までの感染拡大とは桁違いのスピードで拡がっているのが分かります。また、病院での新型コロナウイルス感染者の受け入れが追い付かず、自宅療養中に容体が悪化しても入院先が見つからないという深刻な事態も起きています。日本で生活している外国人の人たちも、このコロナ禍で不安を覚えているのではないでしょうか。
新型コロナウイルス感染症に関する日本の医療体制
デルタ株の感染拡大で急速に感染者が増えている日本ですが、9月上旬の全国の感染者数は20万人弱。東京都の感染者数は約27,000人で、そのうち入院数は約4,200、重症者数は約270人となっています。しかし、昨年感染爆発が起こって医療崩壊を経験したヨーロッパやアメリカの都市と比べて、これらの数字は感染者数も重症者数も少ないのに、なぜ日本では医療のひっ迫が起こっているのでしょうか。
日本には病院や医院がたくさんあり病床数も多いですが、その多くは民間経営の機関です。そのため、設備や治療体制の充実度は各機関の自主性によるところが大きいのです。今回のような感染症の大流行が起こって政府主導で対策を行うべき時に、管理体制が一貫していないために政府や自治体の意向が通りにくいという欠点があります。また、新型コロナウイルス感染症のケアには、通常よりも多く人員を割かなくてはいけないため、病床数があっても人材が足りないという問題が発生してしまっているのです。
現在日本では、コロナ感染者のうち医師が必要と判断した人は医療機関へ入院、それ以外の人は個人の事情に合わせて宿泊施設または自宅で自主隔離・療養することになっています。一番いいのは宿泊施設での隔離療養ですが、個人的な事情などで自宅療養を希望する人もいます。
陽性になったらどうする?おさらい
咳、鼻水、のどの痛み、発熱、倦怠感など、風邪のような症状がある、または濃厚接触者になって新型コロナウイルスに感染したかもしれないと思った時、どうすればいいのか再確認しておきましょう。
I. 初動
- コロナウイルス感染が疑われる場合、まずかかりつけ医などの医療機関、または保健所などの自治体窓口に連絡して症状を説明する。
- 医師や保健所職員の指示に従ってPCR検査を受ける。
陽性の場合:検査した医療機関から保健所へ連絡、医師が判断した場合は入院。その他は施設療養・自宅療養の指示があるまで外出せずに自宅待機。
陰性の場合:症状が治まるまで外出せずに自宅療養、濃厚接触者の場合は保健所等の指示に従って一定期間外出せずに自宅待機。
II. 施設療養の指示があった場合
- 保健所から施設療養の指示があったら、指定の移動方法で指定された宿泊施設で隔離療養。
- 指定された期間(通常10~14日)宿泊施設内に留まって、体調記録を取りながら療養する。着替えなどの生活用品は持参。食事は宿泊施設で用意されます。
- 施設の職員から退所の指示があったらチェックアウトして帰宅する。
III. 自宅療養の指示があった場合
- 保健所から施設療養の指示があったら、外出はせず指定された期間自宅で休む。
- 毎日体温、咳・息苦しさ・倦怠感の具合、酸素飽和度などの記録をつけ、保健所からの連絡に答える。
- 保健所からの許可が出たら外出可能。
自宅療養をする際の注意点
新型コロナウイルスに感染して入院や施設療養になった場合は、食事は用意してもらえるし、医療スタッフがいるので体調が悪化しても対処してもらえます。しかし自宅療養の場合、生活にかかる雑事は自分で対処し、体調が悪化したら自分で外部に助けを求めなくてはいけません。自宅療養者には保健所が1日1回電話で体調の確認をすることになっていますが、これだけをあてにするのは無理があります。そこで、自宅療養になった場合に備えて、次のようなことを準備・把握しておくと安心です。
- コロナ感染が疑われる際に連絡すべき医療機関の連絡先を確認
- 自分の居住地を管轄する保健所の連絡先
- 居住地の自治体の配食サービス(自宅療養者の家に食料を届けてくれるサービス)の有無・連絡先
- 自治体にパルオキシメーターの貸し出しがあるか調べる(血中酸素濃度が下がってもしばらく気付かずに、容体が急変する人がいます。酸素飽和度が一定以上になっていることを定期的に確認するため)
- 自治体のコロナ対策サイトを定期的に確認する
新型コロナウイルス対策サイト(北海道、東京、大阪は多言語仕様)
新型コロナウイルス感染症以外での受診について
新型コロナウイルス感染者の受け入れがひっ迫する一方で、体調に気になる点があっても新型コロナウイルス感染を恐れて医療機関を受診しないという「受診控え」が全国的に見られます。各医療機関では、外来患者のマスク着用、手指消毒、検温などを徹底して感染対策を行っています。また、多くの医療機関では事前予約のみの受付、オンラインや電話での問診を行っているところもあります。定期健診や風邪以外の体調不良などがある人は、感染対策をしたうえで通常通り医療機関を受診しましょう。
まとめ
いまだに終わりの見えないコロナ禍。日本では感染者数が過去最多になり、医療機関での新型コロナウイルス感染者の受け入れがひっ迫する事態になっています。世界中で拡大しているデルタ株は初期の新型コロナウイルスよりもはるかに感染力が高く、今まで以上の予防が必要です。マスクや手洗い、うがいなどの予防はもちろん大切ですが、予防をしていても感染する時はしてしまいます。そんな中、万一感染した場合に備えて、新型コロナウイルス感染者の受け入れ体制、感染したらどう行動するかを確認しておくことは大切です。今一度、自治体のコロナ相談窓口や医療機関の連絡先、行動フローなどを確認しておきましょう。