続く入国制限…コロナ禍の日本ビザ事情の現在

日本ビザ

photo by Paul Davidson

デルタ株の蔓延で各国とも厳しい入国制限を設けられている現在、日本も外国人の新規入国は原則禁止という厳しい措置を取っています。コロナ禍以前は、毎年国外からの観光客が増加しており、飲食・宿泊などのサービス業で外国からの従業員の需要が多くありましたが、現在はそれらの需要がなくなってしまっている状態です。そのため、国内でサービス業をはじめその他の業種で働いていた外国人従業員の失業が相次いでしまっています。

 

日本に在留中の外国人をめぐるビザの問題

2021年9月現在、日本では原則として外国からの新規入国を禁止しており、すでにビザは取っている人も自国で待機中という人が多くいます。そのため日本に来る観光客が激減し、旅行関連や飲食関連の職業に就いていた外国人従業員や技能実習生の失業が急増しています。また、日本の経済全体も大きく落ち込み、雇用自体が減っていることで外国人人口全体の失業率も上がり、卒業した元留学生の就職活動も難航しています。外国人として日本に在留するためには、ビザを取得する時に申請した活動内容を実際に行っていなくてはいけません。失業や就職・転職先が見つからないと日本に在留する資格を失ってしまうことになります。しかし、コロナ禍の現在、自分の国でも新型コロナウイルス感染症が蔓延している、帰国しようとしても交通費を工面できない、そもそも航空便が予約できないなど、ビザの有効期限が迫っているのに帰国したくてもできない人が増えているのです。この状況を緩和するため、日本政府は就職・転職活動が難航している、帰国困難になっているなどの事情がある人に対して、在留期間を延長できる措置を取っています。

 

各ビザの緩和条件

コロナ禍の現在、日本政府が取っている各ビザの緩和条件は下記のとおりです。ビザを下の表にある「特定活動」に変更した後は、資格外活動を申請することで就労許可も受けられますが、許可される労働時間は変更前に持っていたビザの条件に準じます。

就労ビザ・元留学生

ビザの種類

以前の条件

緩和後の条件

就労ビザ
(技術・人文知識・国際業務etc.)

  • 退職後は3ヵ月以内に再就職が必要
  • 6カ月orビザ有効期限のどちらか早く来る日付まで、現在の条件のまま在留が可能
  • その後は「特定活動(6カ月)」へ変更可能(就労可)

 

  • 6カ月orビザ有効期限のどちらか早く来る日付まで、現在の条件のまま在留が可能
  • その後は「特定活動(6カ月)」へ変更可能(就労可)

就職活動中の
元留学生

  • 卒業後は「特定活動(6カ月)」に変更して就職活動を行う。更新は1回のみ可能で1年以内の滞在となる
  • 卒業後は「特定活動(6カ月)」に変更して就職活動を行う。コロナ禍で就職が困難な場合は1年を超えて在留できる
  • 資格外活動を申請すれば28時間/週のアルバイト就労が可能
  • 卒業後は「特定活動(6カ月)」に変更して就職活動を行う。コロナ禍で就職が困難な場合は1年を超えて在留できる
  • 資格外活動を申請すれば28時間/週のアルバイト就労が可能

内定済みで就職待機中の元留学生

  • 内定日から1年以内かつ卒業日から1年半以内に就労を開始
  • コロナ禍のために勤務開始が遅れている場合は、これを超えて在留が可能
  • 資格外活動を申請すれば28時間/週のアルバイト就労が可能
  • コロナ禍のために勤務開始が遅れている場合は、これを超えて在留が可能
  • 資格外活動を申請すれば28時間/週のアルバイト就労が可能

 

技能実習生

日本で培われた技術や知識を開発途上地域へ伝えることを目的として設定された「技能実習」の制度。外国人技能実習生を受け入れている業種は、農業、漁業、建設、自動車整備、機械・金属と様々。しかし技能実習生を受け入れるには、受け入れ側も資金を投じて受け入れ態勢を整える必要があり、コロナ禍で技能実習生の受入を維持できない企業が急増。そのため実習先を失う実習生が増加してしまいました。技能実習生は基本的に転職が認められていませんが、昨年これが緩和され、技能実習生も新たな受け入れ先が確保できた場合は同業種や異業種への転職ができるようになりました(コロナ禍のために実習継続困難になった、もしくは実習を修了したが帰国困難になった人に限る)。注意する点は、同業種への転籍か、異業種への転職かで手続きが変わってくる点です。

  • 同業種の団体へ転籍:監理団体・実習受け入れ企業の変更手続きをして、実習を継続。
  • 異業種への転職:受け入れ先と雇用契約を結び、特定活動(最長1年)に変更。特定活動ビザで実習中に「特定技能」の試験を受け合格すること。

 

まとめ

2019年末に始まり、未だに収束どころかこれまでないほど感染が蔓延してしまっているコロナ禍。日本でもこのパンデミックのあおりを受けて失業したり、学校を卒業しても就職先が見つからなかったりして困っている外国人がたくさんいます。現在、このような人には、現行のビザの有効期限が切れる前にいったん就労可能な「特定活動」ビザを申請して、就職先や転職先が見つかるまでの期間をこれまでよりも長くとれる措置が取られています。また、昨年はさらにこれまで転職をすることができない決まりになっていた技能実習生も、転籍・転職が許可されるようになりました。出入国在留管理庁では、日本に残って働きたい外国人を対象に雇用維持支援も行っているので、コロナ禍による失業などで就職先を見つけたい人はぜひ利用しましょう。

 

 

あきらことほ

この記事を書いた人

あきらことほ あきら ことほ

日本を離れて11年。帰国の度に日本のいいとこ再発見。このコラムが皆様の「日本のいいとこ発見」のお役に立てればウレシイです!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>