photo by Raita Futo
京都府与謝郡伊根町。京都府北部、日本海に張り出した単語半島の東側にある、こぢんまりとした穏やかな湾。この波の静かな伊根湾のすぐ後ろを小高い丘陵地が取り囲み、典型的な日本の漁村の景観を作っています。水面に肩を寄せ合う等にしてひしめき合っているのは、切妻造りの小さな家々。まるで海面に浮かんでいるように見えるこれらの家屋群は「伊根の舟屋」と呼ばれ、古くからの観光名所として人気。古都京都の整然とととのえられた景観とはまた一味違った、ゆっくりとした時間の流れと、古くからの人の営みを体感できる不思議な場所です。
伊根の舟屋とは
photo by Tommy1969
日本三景・天橋立から車で30分ほどの場所にある伊根町は、古くから続く漁師町で、現在も観光と漁業の街として知られています。特に伊根湾の水面にせり出すようにして建てられた「伊根の舟屋」と呼ばれる家屋群は、全国でもここでしか見ることのできない珍しい建築様式です。切妻造りと呼ばれる三角屋根の建物が、妻側を海に向けて立っており、1階部分は船のガレージ、作業場、倉庫を兼ねており、2階部分は居室スペースとなっています。21世紀の世で数百年前の漁村の生活が垣間見られる貴重な景観として、2005年に重要伝統的建造物群保存地区に認定されました。伊根湾の入口に位置する青島が防波堤の役割を果たしているため、年間を通じて風の影響を受けにくく波は穏やか。静かな水面に移る昔ながらの漁村が四季折々の風景の中に溶け込んだ、絵画のような景観を楽しむことができる隠れた名所です。その景観の美しさから、日本では度々テレビドラマや映画の舞台として起用されています。
民宿から釣りができる
photo by Tommy1969
昔は網などを干すための作業場や居室として使われていた舟屋の２階ですが、近年では内部を近代的に改装して民宿として使われているものもあります。夏には宿泊客が１階の舟置き場から直接海に出て泳いだりすることも。風景を見てわかるとおり伊根湾は、陸に上がってすぐに小高い山が急斜面を作りながら連なってそびえています。その斜面は海中へも続いているため、この湾はかなりの急深で湾沿いに砂浜がなく、舟屋を出てすぐの場所でもかなり水が深くなっています。最近では護岸工事が進んでいるので、舟屋のすぐ前はそれほどでもありませんが、ほんの少し沖へ行くと水深20mほどにもなり、昔はイルカやクジラが迷い込んでくるほどだったとか。このような地形と穏やかな波のおかげで、伊根湾は格好の釣り場としても有名です。舟屋のすぐそこまで魚が寄ってくるので、民宿になっている一部の舟屋では、2階から釣り糸を垂れて魚を獲ることができるところもあります。冬場のアイナメと夏場のマゴチが伊根湾の名物。舟屋の2階から情緒あふれる漁村の景色を眺めながら、のんびり魚がかかるのを待つのもまた格別です。
観光・イベント
伊根湾遊覧船
伊根湾沿いに約5㎞に渡って立ち並ぶ舟屋群を、遊覧船に乗って会場から眺めることができます。湾の西橋から約25分をかけてめぐるツアーで、伊根湾の入口にある青島を通り過ぎると、写真で見るような美しい景観が広がります。また船上からは遊覧船についてくるかもめたちに餌をやることもできます。陸側からはなかなか見ることのできない「伊根の舟屋群」の風景を楽しみましょう。
伊根湾遊覧船
午前9時～午後4時、毎時0分、30分毎に運航
料金：大人680円、子供340円
まるごと伊根体験
舟屋ガイドさんたちが実際の舟屋での生活を案内してくれる体験ツアー。舟屋の中の見学はもちろん、地元の人たちが夕食用の魚を獲るためのしかけ「もんどり」の体験、地元の老舗酒造メーカーでの利き酒など、楽しい内容がたくさん。春から11月末まで開かれており、観光客から大人気のツアーです。ツアーにかかる時間は約90分。舟屋についてじっくりと知ることができます。要予約。
舟屋ガイドとめぐる、まるごと伊根体験
料金：大人2,300円（中学生以上）、子供1,800円（小学生）
伊根のうみゃーもん祭り
「うみゃーもん」とは地元の言葉で「おいしい物」という意味。毎年10月頃に開催される、伊根の水産物・農産物などの特産品が模擬店で販売されます。また、伊根マグロの解体ショーなど見どころも沢山。めったに見ることのできない職人の包丁さばきは必見です。
まとめ
江戸時代から地元の人々の暮らしに密着して支えてきた「伊根の舟屋」。京都といえば、まずは京都市内の有名な神社やお寺を思い浮かべがちですが、日本海に面したちいさな漁村にこんなにも素晴らしい景観をそなえた名所がありました。日本三景に数えられる絶景・天橋立にもほど近く、京都観光のおりに足を延ばすのに絶好の場所です。日本国内でも珍しい建築物「伊根の舟屋」。日本に来た際にはぜひ立ち寄って、伝統的な日本の暮らしを感じてください。
