水の国ニッポン。夏は涼やかにダム放流を見に行こう

kurobe dam

photo by Daniel Héctor Stolfi Rosso 

小さな国土に丘陵地が密集してできている日本の地形。その丘陵地の間を無数の河川が縫うように走り、梅雨時や台風の季節に一気に増える雨水を海へと運ぶ役割を果たしています。このような地形の日本では、河川の治水は特に重要事項。また、降った雨水は工業用水や水力発電への利用という、利水の意味でも大変重要な資源です。そのため日本では過去何十年にも渡って、たくさんのダムが建設されてきました。その数、施工中のものも入れると約3000か所!ダムの中には、水位の調節のためなどに行われる放流を観光客に開放しているところもあります。水煙を上げながらものすごい量の水が吐き出される様子は圧巻!今回は日本で放流を見学できるダムを集めてみました。

 

黒部ダム(富山県)

黒部ダムは堤高186mと日本一の高さを誇るアーチ式コンクリートダムで、おそらく日本で一番有名なダム。発電利用を目的として関西電力によって建設されましたが、周囲に人造湖・黒部湖、立山黒部アルペンルートなど人気の観光地があることから、この地域の観光のハイライトとして毎年沢山の観光客でにぎわいます。毎年6月から10月の間は観光放流が実施されており、轟音をとどろかせながら毎秒10トン以上もの水が噴き出す様を、4か所の展望スポットから見学することができます。記念撮影システムで放水をバックグラウンドに写真を摂ったり、ご当地グルメ「黒部ダムカレー」を堪能したりと楽しい寄り道も沢山で、一日たっぷり楽しめます。

アクセス:関電トンネルトロリーバス・扇沢駅よりトロリーバス(有料)で約16分
黒部ダムオフィシャルサイト

 

豊平峡ダム(北海道)

北海道最大の都市・札幌を通る豊平川の治水、水力発電への利水、札幌市への上水道供給を目的に建設された多目的ダム。豊平峡ダムから下流には定山渓温泉や豊平峡温泉があり、温泉旅行と併せてダム周辺を散策する人たちに人気。また、ダムを取り囲む豊平峡は紅葉の名所として名高く、木々が色づくころには遊歩道や展望台で美しい秋の景色を楽しむために、沢山の観光客が訪れます。毎年6月から10月は観光放水が行われており、豪快に湖水が噴き出す絶景をダム堤頂部から眺めることができます。

アクセス:JR「さっぽろ駅」 から無料駐車場まで車で約60分。無料駐車場からは有料電気バス(有料)でダムまで移動。
豊平峡オフィシャルサイト
豊平峡ダム放流スケジュール

 

宮ヶ瀬ダム(神奈川県)

洪水調節、周辺地域への上水道供給、発電などのために開発された多目的ダム。ダムおよびダム湖・宮ケ瀬湖の周辺は、展望台やダム関連のエネルギー資料館、湖畔庭園、カヌー教室など様々なアクティビティが楽しめる総合公園になっています。4月から11月の間は、毎週水曜、毎月第2日曜日、第2・第4金曜日に観光放流が行われ、午前と午後それぞれ6分間ずつダムの放水を見学が可能。放流日にはダム堤の放水口から高さ70mの2本の滝が現れ、大量の水を吐き出す様子を見るため、たくさんの人が訪れます。都心から約50㎞と近く、首都圏から簡単に訪れることができるのも嬉しいですね。

アクセス:JR・京王「橋本駅」から、神奈川中央交通バス「鳥居原ふれあいの館」行きで約50分、終点下車ほか
宮ケ瀬湖オフィシャルサイト

 

温井ダム(広島県)

古くから洪水被害の多かった、広島県西部を流れる太田川の洪水調節、広島市周辺地域への上水道供給や発電を目的に建設されたアーチ式コンクリートダム。ダム堤の高さは、黒部ダムに続く日本で2番目。人造湖・龍姫湖(りゅうきこ)は美しい景観で知られており、たくさんの観光客が訪れる広島県の主要な観光地となっています。温井ダムでは毎年6月11日~10月25日までの期間を「洪水期」を定めており、梅雨入り前にあらかじめダムの水位を下げて洪水調節を行います。この放水は観光放流として公開されており、たくさんの観光客から人気を集めています。放流の他にもダム最下部にあるトンネルの見学や、ダム資料館、管理署でもらえるダムカードなど、さまざまな見どころが用意されています。

アクセス:広島駅新幹線口から、岩見交通高速バス・新広益線「益田駅」行きで約1時間40分、「深入山いこいの村」で下車
広島県安芸太田町ウェブサイト

 

徳山ダム(岐阜県)

貯水量日本一を誇る、国内最大規模の多目的ダム。岩石や土砂を積み上げて建設するロックフィルダムというタイプのダムで、ダム堤は長い傾斜状に設計。ゴールデンウィーク時期には、洪水吐きゲートと呼ばれるダム堤の頭頂部にあるゲートから放流を行っています。他のダムで見られるような水しぶきを上げながら噴き出すような放流ではなく、ダム堤の斜面にうろこ模様を描きながら滑り落ちる様子が独特。毎年放流の帰還にはたくさんの観光客の姿が見られます。またこのダムの建設に当たっては、徳山村という集落が全村ダムの底に沈むという出来事があり、ダム建設によってできた人造湖は村の名前を取って徳山湖と名付けられました。近隣の徳山会館では、ダムに沈む以前の徳山村の様子を写真で見ることができます。

アクセス:名神高速大垣ICから国道303号、国道417号を経て約80分
徳山ダム管理署ウェブサイト

 

鳴子ダム(宮城県)

日本では3例目のアーチ式コンクリートダムで、治水や発電のための多目的ダムとして建設されました。毎年ゴールデンウィーク時期にはダム堤のアーチの端から端へ鯉のぼりが設置され、ダムの上部から巨大な滝のように水が放流されます。いく筋もの綺麗な帯のように整然と落ちていく「すだれ放流」と、まるで滝を上っているように見える鯉のぼりがこの季節にふさわしい景観を作り出します。周辺はキャンプ場やスポーツ広場、バーベキュー場を併設した総合公園。もちろん、ダムの管理室や資料室などの見学も可能。放流を見学した後も1日中様々なアクティビティを楽しめる場所として、観光客にも人気です。

アクセス:JR「鳴子温泉駅」からタクシーで約7分
鳴子管理署ウェブサイト

 

まとめ

日本に数千個あるダムの内、定期的に一般の観光客に放流を開放しているものはごく少数しかありません。音をとどろかせて流れ落ちる水を間近で目にすると臨場感たっぷり。観光放流はどこも春以降、暖かくなってから実施しています。どのダムも管理室などを見学用に一般開放していますので、ダムの構造や仕組みについて学ぶこともできます。観光放流を実施しているダムはどれも山中に位置しているため、アクセスに少々時間がかかりますが、たまには足を延ばして緑の中で自然を満喫するのも楽しいですよ。事前にウェブサイト等で放流のスケジュールチェックをお忘れなく。

 

 

あきらことほ

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あきらことほ あきら ことほ

日本を離れて11年。帰国の度に日本のいいとこ再発見。このコラムが皆様の「日本のいいとこ発見」のお役に立てればウレシイです!

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