生命の神秘に立ち会おう!日本のウミガメ産卵スポット4選

Sea turtle

photo by Ben Alman

誰もが一生に一度は見ておくべき神秘的な風景といわれる、ウミガメの産卵。日本にもウミガメの産卵を観察できる場所が複数存在します。都心からのアクセスのしやすさに難点はありますが、それを補ってあまりある感動を味わうことができるでしょう。ここではウミガメについての基本的な知識と代表的な観察スポットをご紹介します。

 

ウミガメについての基礎知識

Sea turtle baby

photo by Angel Xavier Viera-Vargas

亀(カメ)の仲間の中で、海に生息する大型のカメがウミガメと呼ばれています。陸や川に住むリクガメのように甲羅に手足をしまうことができず、爪のないヒレのような手足をしているのが特徴です。日本の「浦島太郎」という昔話では、主人公を甲羅の上に乗せて海底の竜宮城へ連れていく役割を果たしており、昔から日本人にも馴染み深いカメといえます。日本近海では5種のウミガメの仲間が確認されており、その中で日本の海岸で産卵をした記録のあるウミガメは、アオウミガメ、アカウミガメ、タイマイの3種です。特に北太平洋域に生息するアカウミガメは日本列島の太平洋岸でしか産卵せず、日本で保護しなければ絶滅してしまうため、熱心な保護活動や調査研究が行われています。

 

ウミガメの産卵とは

Sea turtlephoto by Deepwater Horizon Response

ウミガメの産卵時期はだいたい5月から8月頃までで、雌のカメが産卵の時だけ夜の砂浜に上陸して産卵します。砂の中に体を埋めて後ろ足で60cm程度の深さの穴を掘り、ピンポン玉大の卵を100個前後、1~3時間かけて産みます。産卵が終わると、穴に砂をかけて元通りの状態にしてから海へ戻っていきます。なお「ウミガメは産卵時に涙を流す」という話がありますが、実は流しているのは涙ではなく塩分を含んだ粘液です。ウミガメは海中を泳いだり餌を食べたりする際に体内に多量の塩分を取り込んでいるため、余分な塩分を排出する塩類線という器官を体に備えています。それがたまたま目の近くに位置しているせいで泣いているように見えるというのが実際のところなのですが、たとえ単なる体内の塩分濃度のコントロールに過ぎない現象だとしても、神秘的な産卵シーンと合わせて見ると、産まれてくる子供のために流す母の愛情ゆえの涙に見えても不思議はないのかもしれません。

 

ウミガメ観察の際の注意点

砂浜で明かりをつけない

母ガメが警戒して上陸や産卵をやめてしまいます。また産まれた子ガメに強い光が当たると方向感覚が失われて海にたどりつけません。フラッシュやストロボをたいて撮影したい気持ちもよくわかりますが、ここはぐっと我慢して静かに観察してください。

砂浜を汚さない

せっかく子ガメが孵化しても砂浜に余計なものが落ちていると道を阻まれて海まで行けなくなってしまいます。ごみや空き缶、空き瓶などは放置せずに持ち帰りましょう。なおウミガメ観察にお酒や煙草の持ち込みは厳禁です。

砂浜で騒がない

海の中で暮らすウミガメは聴覚が発達しており、走り回る音やおしゃべりの声なども敏感にキャッチして警戒します。ウミガメを待つ間は余計な音を立てないよう静かに過ごすことが大切です。大きな光と音を伴う花火をするなどはもってのほかです。 

上陸中・穴掘り中のカメに近づかない

産卵を控えたウミガメはとても神経質になっています。人の気配を感じると警戒して海に戻ってしまうことも考えられるので遠くからそっと見守り、産卵が始まったら後ろからそっと近づいて見せてもらいましょう。あまり近づき過ぎると驚かせてしまうので、ほどほどに。 

ウミガメや卵を触らない、取らない

ウミガメは近年絶滅の危機に瀕しており、世界的に保護の為の活動が行われている生物です。当たり前のことですが、ウミガメやその卵は大切に扱い、決して捕まえたり触ったりしないように気をつけましょう。

 

観察スポット1:千里の浜(和歌山県みなべ町)

本州で一番のアカウミガメの産卵地と言われるのがここみなべ町の千里の浜です。長さ約1.3キロの美しい砂浜では、5月~8月上旬にかけてほぼ毎日のように産卵が行われています。千里の浜でウミガメの産卵を観察したい方は、事前にみなべ町教育委員会に申請する必要があります。申請といっても「住所」「氏名」「電話番号」「観察希望日」「参加人数」「観察目的」を記載したメールかFAXを送るだけで簡単にでき、観察の手順を教えてもらえます。当日はウミガメ研究班、または監視員の指示に従って観察しましょう。

千里の浜 (みなべ町観光協会
住所:和歌山県日高郡みなべ町山内
JR南部駅より車で約10分

 

観察スポット2:大浜海岸(徳島県美波町)

徳島県の美波町(旧日和佐町)にある大浜海岸は、延長約500mのゆるやかな傾斜を持つ砂浜で、昔からアカウミガメの産卵地となっています。すぐ近くには世界でも珍しいウミガメをテーマにした博物館「日和佐 うみがめ博物館 カレッタ」もあります。海岸で産卵シーンに立ち会えなかったとしても、博物館内では可愛い子ガメが泳ぐ水槽や、ウミガメのお腹を真下から見られるコーナー、屋外では1mを超える大きなウミガメが泳ぐプールもあり、間近でカメをじっくりと観察することができます。また、隣接する宿「うみがめ荘」は、リーズナブルに泊まれる上、ウミガメが上陸すると館内放送で教えてくれるという嬉しいサービス付きです。

大浜海岸 (美波町ホームページ
住所:徳島県海部郡美波町日和佐浦
JR日和佐駅より車で約5分

 

観察スポット3:永田いなか浜(鹿児島県屋久島)

鹿児島はウミガメの産卵数日本一の県です。なかでも屋久島の永田浜は北半球一のアカウミガメの産卵地として名高く、一度のシーズンに1万頭以上のウミガメが産卵のために上陸しています。産卵シーンを見るためには地元が主催している予約制の観察会に参加する必要があります。観察会は有料で、大人1,500円、中学生以下無料です。30分のレクチャーを受けた後、係員の指示に従って観察を行います。人数制限があるので、永田連絡協議会のホームページから早めに予約をしておきましょう。また隣接の「屋久島うみがめ館」では写真パネルや貴重な資料でウミガメについて深く知ることができます。日本語と併せて英語の説明文があるのも外国人旅行者にとって嬉しいところです。

永田いなか浜  (屋久島観光協会ホームページ
鹿児島県熊毛郡屋久島町永田
鹿児島空港から飛行機で屋久島空港または高速船

 

観察スポット4:小笠原(東京都小笠原村)

飛行機の便がなく船で26時間ほど揺られなければ辿りつけない島、小笠原諸島。東京から南東へ1,000kmに位置するこの世界自然遺産の美しい島は、アオウミガメの日本最大の繁殖地でもあります。島内の約40か所で確認されているというウミガメの産卵を見るには、小笠原観光協会のホームページで情報提供されているナイトツアーに参加すると便利で、天然記念物の「オガサワラオオコウモリ」なども同時に観察できます。また父島にある小笠原海洋センターでは水槽で及ぶアオウミガメを見ることができるほか、ウミガメ教室も開催されており、コースによってはウミガメの卵を触ることまで可能です。

東京都小笠原村父島 (小笠原村観光局ホームページ
東京港竹芝桟橋から定期船「おがさわら丸」で25時間30分

 

まとめ

ウミガメの生態は未だに謎に包まれており、滅びゆく動物として今その保護が強く叫ばれています。その神秘的な産卵に立ち会うにあたっては、やさしい心遣いとマナーが求められます。言うまでもないことですが、ウミガメは自然の生物のため、はるばる訪れてもタイミングによっては産卵を観察できないこともあります。そんな時は大らかな気持ちで受け止めて何度でもトライしてみてください。

 

 

磯山ゆきえ

この記事を書いた人

磯山ゆきえ 磯山 ゆきえ

気ままな海外一人旅が好きです。外から見たこの国の姿を意識しながら、日本に関する楽しい話題をお届けできたらと思っています。

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