photo by pennythots
日本では住民登録をして日本に居住している住民は、必ず何らかの公的医療保険に加入することが義務付けられています。企業などに雇用されている人は社会保険、個人事業主、無職の人など、その他の保険制度に属さない人は国民健康保険に加入して、毎月保険料を支払います。そうすることで加入者がけがや病気をした時は、医療費の一部を支払うだけで治療や診察を受けることができます。ただし、これは医療機関の窓口で健康保険証を提示した場合のみ。それでは、公的医療保険に加入したけれどまだ保険証が発行されていないなど、やむを得ず健康保険証を提示できなかった場合にはいったいどうすればいいのでしょうか。
保険証について
国民健康保険や社会保険などの公的医療保険に加入すると、自治体や協会けんぽなどの運営団体から健康保険証が支給されます。これは医療給付の受給資格を証明する大切な証書で、医療機関での診察や治療を受ける際に必ず提示しなくてはいけません。健康保険証を提示することで、加入者は医療費の一部(下記表参照)を負担するだけで診療を受けることができます。加えて、日本では健康保険証が身分証明書として使用されることもあるので、保管には十分注意する必要があります。
一部負担金の割合
年齢 |
負担割合 |
小学校入学前 |
2割 |
小学校入学以後 |
3割 |
70歳以上 |
2割 |
70歳以上 |
3割 |
保険証を持たずに医療機関で診察や治療を受けたら
医療機関で診療を受ける際に、健康保険証を提示することができない場合、かかる費用はいったん被保険者の全額負担となります。公的医療保険に加入していれば、後日、決められた自己負担分以外の医療費の払い戻しを受けることができます。
医療機関で払い戻しをしてくれる場合
医療機関によっては、後日健康保険証を持参すれば払い戻しに応じてくれるところもありますので、まずは受付で相談してみましょう。医療機関の窓口で払い戻しに応じてくれる場合でも、保険証の提示には期限がありますので、必ず期限内に保険証を提示しに行きましょう。期限を過ぎると医療機関での払い戻しを受けられなくなります。
医療機関で払い戻しを受けられない場合
保険証を提示できなかった理由が、公的医療保険に加入したばかりでまだ保険証が届いていない、外出先での急病で保険証を携帯していなかったなどやむを得ない事情の場合は、後日、市区町村の役所や協会けんぽなど医療保険の運営団体の窓口で申請をすれば、医療費の払い戻しを受けることができます。これには一応審査があり、健康保険証を忘れただけなど、ただの不注意で提示できなかった場合には、払い戻しが受けられない場合があります。医療費の払い戻しを申請できる期間は、医療費を支払った日から2年間です。
払い戻し申請手続きに必要なもの
医療保険の運営団体の窓口で払い戻しを申請する際、必要な提出物は下記のとおりです。
国民健康保険加入者の場合
市区町村の国民健康保険窓口で手続きを行います。自治体によって変化はありますが、下記の提出・提示を求められることが多いです。
- 自治体指定の申請書
- 国民健康保険証
- 世帯主の印鑑
- 世帯主名義の預金通帳
- 診療報酬明細書
- 病院の領収書
協会けんぽ・健康保険組合加入者の場合
企業に勤めている人などで、協会けんぽや健康保険組合に加入している人は、各団体の窓口で手続きを行います。提出物は各団体によって変化がありますが、下記の書類は必須になります。
- 各団体指定の申請書
- 診療報酬明細書
- 病院の領収書
必要書類のうち、「診療報酬明細書」は傷病名の確認、治療内容に対して正しい診療費が計算されているかどうかの確認、健康保険で認められない項目があるかの確認のために必要になります。診察や治療の後、忘れずに医療機関に依頼して発行してもらいましょう。病院の領収書も必ず保管してください。
医療機関以外の窓口で申請する際の注意点
いったん自己負担をした医療費を、自治体や社会保険の運営団体の窓口で払い戻しを受ける時に注意したい点、それは保険診療と自由診療での医療費の計算方法の違いです。
- 保険診療:保険が適用される診療のこと
- 自由診療:保険が適用されない診療のこと
日本では医療機関が行う治療ごとに点数が決められており、医療費はこの点数に従って決定されます。
- 保険診療の計算方法:1点=10円で計算する。消費税は非課税。
- 自由診療の計算方法:1点をいくらで計算するかは病院が決める(1点=11点で計算するところもあれば、20点、25点のところも)また自由診療は消費税が課税される場合が多い。
健康保険証を提示して受けた診療は、保険でカバーされるものであれば全て1点=10円の保険診療で計算されます。一方、健康保険証を提示せずに診療を受けた場合、たとえ公的医療保険に加入していても自由診療扱いになります。いったん全額立て替え払いした自由診療の医療費は、期限内に改めて医療機関へ保険証を提示しに行けば、保険診療の金額に計算しなおして払い戻しをしてくれます。しかし自治体や保険運営団体の窓口で払い戻しを申請する場合は、「保険診療で計算された満額を払った場合」の保険負担分しか返金されません。つまり、医療機関が自由診療料金として保険診療よりも高い単価を設定していた場合、その差額分と消費税は払い戻しされずに自己負担となります。
まとめ
適用範囲が広く世界的にも評価の高い日本の公的医療保険システム。一般的な診療の殆どがカバーされており、わずかな費用で受診できるとあって、健康保険証の提示は重要事項です。しかし、加入してから保険証が手元に届くまでにしばらく時間がかかることも。その間、やむを得ずけがや病気などで診療を受けることになった場合も、いったん全額立て替え払いとなってしまいますが、手続きで払い戻しをしてもらえますのでご安心を。ただし、保険診療と自由診療の計算の違いがありますので、払い戻しは出来ればかかった病院へ手続きしに行ったほうがよさそうです。あと、最近の保険証はコンパクトなカードタイプが主流です。保険証が届いた後は、いつ何時緊急事態に陥ってもいいように、財布の中にしのばせておきましょう。
関連記事
WHO世界最高評価!外国人の国民健康保険加入制度とは
日本を出国する際はお忘れなく。国民健康保険の脱退手続きについて
引越しする時には忘れずに!国民健康保険の住所変更手続き
社会保険から国民健康保険への切り替え方法と任意継続
日本で病気やケガをしたら…自分の医者は自分で選ぶ!?
外国人も加入必須!国民健康保険を支払わないとどうなる?
国保加入者は渡航先での医療費が70%返ってくるってホント?
保険料が高すぎる…!国民健康保険料の減免申請
春は花粉の季節…日本人が実践する花粉症対策いろいろ
大人の歯科治療も国保でカバー?日本で歯医者へ行くときは?
仕事が原因のケガや病気を補償?労災保険の基礎知識
ケガや病気でやむを得ず休業…そんなときは健康保険の傷病手当金
【療養補償給付編】仕事が原因のケガや病気を補償?労災保険の申請方法
【休業補償給付編】仕事中のケガで休んだ場合の収入補償?労災保険の申請方法