2・3月は所得税納税!外国人のための確定申告ガイド

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photo by blueprimecapital

日本では毎年2月16日から3月15日の間に確定申告を行い、前年の1月から12月までの所得に対する所得税および復興特別所得税を納めます。企業などに勤めていれば、通常は会社が従業員の給与から源泉徴収をして、年末調整まで手続きをしてくれます。ただし、給与所得者であっても副収入がある人や個人事業主などは、自分で確定申告をする必要が出てきます。また日本国籍を持って日本に居住していれば、当然全ての所得に対して日本に納税しなくてはなりませんが、外国籍の居住者や非居住者の場合は少々条件が変わってきます。今回は日本で収入を得る全ての人に関わりのある「確定申告」の基本についてご説明します。

 

居住者と非居住者

日本で収入を得ている外国人が確定申告をする場合、まず始めに確認しておくべきことは「居住者と非居住者の区分」です。また居住者であれば、永住者であるか非永住者であるかも重要になります。ただし、ここでいう「永住者」とは課税対象としての区分であり、納税者当人の在留資格とは関係ありません。居住者と非居住者の区分の基準は下記の通りです。

  1. 居住者のうちの永住者:日本国籍を有している、または、過去10年間に日本に住所・居所を有していた期間の合計が5年以上ある人
  2. 居住者のうちの非永住者:日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に国内に住所又は居所を有する期間の合計が5年以下である人のうち、非居住者でない人
  3. 非居住者:日本に住所を持たない人、かつ日本に1年以上の居所を有さない人

※居所とは、生活の本拠地ではないが一定期間日本で生活する場所を指します。

さらに、上記の区分によって所得税の納税範囲が変わってきます。

  1. 居住者のうちの永住者:日本国内・国外で生じたすべての所得
  2. 居住者のうちの非永住者:日本国内で生じた所得、および国外で生じた所得のうち日本国内で支払いがなされたものと、国外から日本国内に送金が行われたもの
  3. 非居住者:日本国内で生じた所得のみ

 

確定申告をする必要がある人とは

さて、日本で企業などに勤めている人は、書類に記入するだけで雇用主が源泉徴収と年末調整を手配してくれるので、確定申告はしたことがないという人が多いと思います。いっぽう、個人事業主やフリーランスで仕事をしている人などは、自分で確定申告をするという印象がありますね。これはあながち間違いではありませんが、場合によっては給与所得者であっても自分で確定申告を行う必要が出てきます。

給与所得がある人

課税対象の全所得から所得控除を差し引き、所得税率を掛けて求められた所得税額から税額控除を差し引いて、なお残額がある人のうち

  • 給与の収入金額が2,000万円を超える
  • 給与を1か所から受けていて、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える
  • 給与を2か所以上から受けていて、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)との合計額が20万円を超える
  • 在日の外国公館に勤務する方や家事使用人の方などで、給与の支払を受ける際に所得税及び復興特別所得税を源泉徴収されないこととなっている

などの人は、確定申告が必要です。

事業主や不動産所得がある人など

事業や不動産運営で得た所得から必要経費を差し引いた金額と、各種の所得金額の合計から所得控除を差し引いたものに税率を掛けて求められる所得税額が、配当控除額よりも多い人は確定申告が必要です。

退職所得がある人

外国企業から支払われた退職金など源泉徴収されていない所得がある場合。また、退職金から源泉徴収されていても、正規に計算した税額よりも少ない場合は確定申告が必要です。逆に、源泉徴収された額が正規に計算した税額を上回る場合は、確定申告をすることで差額を還付してもらえます。

その他

公的年金の受給額が年400万円を超える場合や、公的年金以外の所得が年間20万円以上ある場合などは確定申告が必要です。

 

確定申告の計算方法

確定申告では、下記のような計算で納入するべき所得税額を算出します。

  1. 各種の所得を全て合計します。
  2. 1. から該当する所得控除を差し引きます。
  3. 2. に該当する税率を掛けます。
  4. 3. から該当する全ての税額控除を差し引いて所得税額を算出します。
  5. 4. に2.1%をかけて復興特別所得税額を算出します。

※所得税の税率は国税庁のウェブサイトに載っています

各種の所得、所得控除、税額控除とは下記のようなものが含まれます。

各種の所得

給与所得、事業所得、退職所得、不動産所得、利子所得、配当所得、譲渡所得、一時所得、雑所得、山林所得

所得控除

基礎控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、医療費控除、社会保険料控除、寄附金控除、雑損控除、地震保険料控除、生命保険料控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、小規模企業共済等掛金控除

税額控除

外国税額控除、配当控除、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除、住宅耐震改修特別控除、住宅特定改修特別税額控除など

 

外国人が覚えておくべき外国税額控除

上記に挙げた控除のうち、特に外国人納税者に関わりが深いものが「外国税額控除」です。日本は所得に対する二重課税を防ぐために、一部の国と租税条約を結んでいます。日本国外で生じた所得に対して海外で納税をしたにも関わらず日本でも課税対象になっているものは、その納税済みの税額を日本で支払うべき税額から差し引くことができます。外国税額控除は、所得税、復興特別所得税、道府県民税、市町村民税の順で差し引かれていき、すべてを限度額まで控除してもなお余剰がある場合は、過去3年分を繰り越すことができます。
※日本と租税条約を締結している国は、財務省のウェブサイトに国名が載っています。確定申告書の種類と提出方法

 

申告書の種類

確定申告書にはいくつかの種類があり、申告する所得の区分によって使い分けが必要になります。下記のうち、汎用性が高いものは「申告書B様式」と呼ばれる書式で、給与所得者や個人事業主の納税者に広く使用されています。各申告書は国税庁のウェブサイトからダウンロードできるほか、税務署に直接取りに行ったり、返信用封筒を同封して希望書類をかいたメモを税務署に送れば郵送してもらえます。

  • 申告書A様式:所得の種類が給与所得や公的年金等・その他の雑所得、配当所得、一時所得のみで、なおかつ予定納税のない人向け。申告書B様式の簡易版。
  • 申告書B様式:事業所得や不動産所得のある人、給与所得者などすべての人が使用できます。

※この他、土地・建物や株式の譲渡があった場合に提出する「申告書第三表」や、事業で生じた損失を繰り越す際などに使用する「申告書第四表」があります。
※事業所得のある人は、申告書B様式に加えて「白色申告」や「青色申告」で収支報告と納税額の確定を行う必要があります

提出方法

確定申告をする時には、確定申告書に所得を証明する源泉徴収票や、控除額を裏付ける書類(医療費の領収書や保険料の支払い証明書など)を添付して税務署に提出します。提出方法には下記の三通りがあります。

  • 直接最寄りの税務署に提出:一番確実な提出方法。確定申告期間の始めと終了間際は非常に込み合います。
  • 郵送:普通郵便でも送付可能ですが送付の証拠が残らないので、書留郵便など確実に受け取ったことが判る方法が望ましいです。宅配便での送付は認められていません。
  • e-Tax でオンライン申告:もっとも手軽な提出方法ですが、事前に登録や専用機器の購入が必要です.

 

まとめ

日本で働く以上、避けては通れない所得税の納税。所得の区分や多岐に渡る控除の種類に加えて、外国籍の人の場合は生活の本拠地がどこであるかという点や、日本での居住期間によって課税対象所得が変わってきます。色々と複雑な確定申告の手続きですから、税理士に任せきりという人も多いのでは。でもせっかく日本で得た自分の所得ですから、この機会にぜひ自分の税額や控除額を見直してみてはいかがでしょうか。

 


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あきらことほ

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日本を離れて11年。帰国の度に日本のいいとこ再発見。このコラムが皆様の「日本のいいとこ発見」のお役に立てればウレシイです!

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