photo by Kim Nilsson
ユネスコ無形文化遺産に登録され世界的にも注目を浴びている和食。その和食に欠かせないのが日本古来の日本酒です。海外でも和食人気と共に注目されている日本酒。せっかく日本に来たのなら楽しみたいものすね。グラスやお猪口など日本酒には色々な飲み方がありますが伝統的な「ます」で飲んでみたいもの。海外の方にはあまり馴染みのない「ます」ですが一体「ます」とは何か?どのようにして飲むのが正しい飲み方なのでしょう?
そもそも「ます」って何?
古くは正確に年貢を徴収する為に米などを計る軽量器でした。それが木目の美しさや木の持つ香りの良さ、その様式美などから祝いの席での酒器として用いられるようになりました。昔から邪気を払うと言い伝えられていて今でも様々な式典やセレモニーでも用いられます。結婚式などでは両家の家紋や新郎新婦の名前を入れたものが作られたりパーティなどでは記念品として親しまれています。「ます」は元来は杉の木を使って作られていましたが、現在では色と香りが良いヒノキが多く使われるようになりました。ヒノキは神社仏閣の建築材としても用いられる他、抗菌効果も高く、まな板やお寿司屋さんのカウンターにも使われるなどして日本人に深く親しまれている木材です。現在この「ます」は日本に留まらず海外からも日本の伝統的な器として注目されています。
では本題の「ます酒」の正しい飲み方
日本の伝統ある「ます」でさっそく日本酒をいただきたいですね。まずは正しい飲み方を覚えましょう。
右手で、底に四指、淵に親指
「ます」を右手の四指の上に乗せ、親指は軽くふちにかけておきます。わしづかみはNG。平面に下唇を乗せて、すするように飲むのが正式な飲み方とされています。
飲み口は平らな面
四角い「ます」を目の前に、何となく角のとがった部分から飲むのが楽そうに思えますが…これはNG。平らな部分から飲むのが正解です。ちなみに武士・サムライの時代にはいつでも刀を抜けるように右手はいつもあけておくのが作法だったそうで、昔は左手で飲んでいましたが今では右手で飲むのが一般的です。
さらに小粋な飲み方
続いては日本人でもあまり知らない伝統に則った小粋な飲み方です。
「ます」の底板の木目は平行に
「ます」の底板の木目は横になるように「ます」を持ちます。古来より和食の膳では縦膳は不吉とされています。お盆なども木目はお客様から見て横になるように置くのがお作法です。あまり目立たないことですが細やかな日本ならではの、おもてなしの心ですね。
「ます」と向かい合って右角に塩を盛る
「ます」でお酒を飲む際には「ます」の角の部分に塩を乗せて飲みます。昔は塩を酒の肴にして飲むことが多く、お清めの意味で塩を盛ることもあったようです。酒と塩は神様への供物の一対です。これはその名残ですね。塩を乗せるのは「ます」の右向こう側、角から少しずらして塩を乗せます。
塩は少しづつ飲み口にズラすか少しづつ酒に落とす
塩は飲み口に少しづつ取りながら飲むのですが、塩をお酒に入れながら飲んでも問題ありません。塩が酒の甘みを引き立て「ます」の材料の木の香りがふんわり薫り、お酒の味を更に引き立ててくれます。この飲み方を知ってると、かなりの日本通ですよ。
まとめ
日本でも日本酒を「ます」ではなくグラスなどで飲むことも多くなりました。それでも伝統的な「ます」で日本酒を飲むことはガラスや他の酒器には無い伝統美や「ます」ならではの風合いを楽しむことができます。また「ます」に纏わる話や飲み方のひとつひとつには様々な日本の文化が絡んでいて、和食と日本酒、日本文化の奥深さを体感することができますよ。是非日本に来た際には挑戦してみてくださいね。
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