転職先の有無で変わる!外国人が転職時に必要な手続きとは?

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photo by stonebridge

就労の在留資格を持って日本で働いている人が、時折出くわす「転職」の機会。運悪く人員整理の対象になってしまい突然解雇通知を受けてしまったという人や、はたまた別の会社から声がかかりキャリアアップすることができたという人まで。転職の際に必要になる公的手続きは基本的に日本人も外国人もほぼ同様ですが、外国人の場合は少々やるべきことが増えます。また、次の就職までに時間が空いてしまっている場合と、次の就職先が既に決まっている場合では手続きの内容が変わってきます。

 

次の就職先が決まっていない場合

厚生年金から国民年金へ切り替え

20歳以上60歳未満の人が日本の企業などに雇用されて働く場合、大多数が雇用主を通じて厚生年金や共済年金といった公的年金に加入しています。退職するとそれまで加入していた保険の加入資格は喪失します。次の就職先が決まっておらず離職期間が2週間以上ある場合は、自分で市町村役場に出向いて国民年金への切り替え手続きが必要です。手続きには年金手帳が必ず必要になりますが、その他の必要書類は自治体によって変わりますので、事前に居住地の市町村役場の年金課へ問合せましょう。手続きの期限は退職した日から14日以内です。また、失業による転職で離職期間中の保険料の支払いが難しい人は、特例免除を利用することができます。
※厚生年金の適用を受けていない事業主に雇用されていて、最初から国民年金に加入していた人は手続きの必要はありません。

転職の際には忘れずに!厚生年金から国民年金への切り替え方法
日本で仕事を失った際に使える年金の「特例免除」とは

社会保険を国民健康保険に切り替え

社会保険完備の事業主に雇用されていた人は、退職したらその事業主の社会保険は脱退し、健康保険証は事業主に返納、元の雇用主が脱退手続きを行います。その後、自分で居住地の市町村役場の国民健康保険課に出向き、国民健康保険への切り替えを行います。また、退職後も前職の社会保険に加入したままでいたいという人は、条件を満たしていれば2年間の期限付きで延長することができます。その場合、退職日から20日以内に住所地を管轄する協会けんぽ支部へ「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出します。
※前職の事業主が社会保険を完備しておらず、最初から国民健康保険に加入していた人は手続きの必要はありません。

社会保険から国民健康保険への切り替え方法と任意継続

失業保険の申請

日本では1人でも従業員を雇用する場合、雇用保険への加入が義務付けられています。労働時間や継続的な雇用など条件はありますが、殆どの労働者は雇用保険でカバーされています。もし日本で失業した場合、特に解雇など自己都合以外の理由で収入が絶たれた時は、雇用保険の基本手当、通称「失業保険」を受け取ることができます。手続きは離職票、雇用保険被保険者証、在留カード、証明写真2枚、印鑑、銀行口座通帳を持参して、最寄りのハローワークで行います。受給できる金額や期間は、前職での給与や雇用年数によって変動します。また、失業保険の受給には求職中であることが条件になるので、定期的にハローワークへ出向いて「失業の認定」をしてもらいます。また自己都合によって退職した人も受給できますが、実際に給付を受けられるようになるまでに3か月以上の待機期間があります。

外国人が日本で転職する時に使える失業手当とは

税金関連の手続き

日本では給与所得者の所得税は、雇用主が毎月の給与から天引きして支払うことになっています。これを「源泉徴収」といいます。雇用主は1年の終わり12月に「年末調整」を行って、従業員の所得税の過不足分を調整します。また、住民税などの地方税も、前年の1月~12月の年収を元に雇用主が計算して給与から天引きします。転職の際には、退職・再就職の時期によってこれらの税金関連の手続きが必要になります

所得税の年末調整

【退職した年の12月までに再就職した場合】
新しい雇用主を通じて年末調整をします。前職を退職時にもらった源泉徴収票を、新しい雇用主に提出します。
【退職した年の12月までに再就職しなかった場合】
居住地の税務署に出向いて確定申告を行います。前職を退職時にもらった源泉徴収票と印鑑を持参してください。

地方税の支払い

在職中の地方税の支払いは、前年の1月から12月の給与額を元に計算して月割にしたものが、6月から5月の間に天引きされます(特別徴収)。前職を退職した時期によって、その後の手続きが変わってきます。
【1月~5月の間に退職した場合】
5月までに支払うべき住民税のうち、未払い分が退職時に一括で徴収されます。
【6月~12月の間に退職した場合】
翌年5月までに支払い義務のあった住民税のうち、前職で天引きされずに未払いとなっているものを退職時に一括、もしくは4分割で支払います。分割にする場合は、地方自治体から送られてくる納付書を使って自分で支払います(普通徴収)。

 

すぐ次の就職先で働く場合

転職前に次の就職先が決まっており離職期間を挟まない場合は、手続きはずいぶん簡素化されます。

年金

次の雇用主へ年金手帳を渡せば、厚生年金など公的年金への加入手続きを行ってもらえます。雇用形態などの事情で厚生年金等への加入ができない場合は、前職を退職後14日以内に自身で国民年金への切り替えが必要です。

社会保険

同じく新しい雇用主を通じて健康保険への加入手続きを行ってもらいます。新しい雇用主が社会保険完備でない場合、前職を退職後14日以内に自身で国民健康保険への切り替えが必要です。

失業保険

失業期間がないので手続き不要です。前職の退職時にもらった雇用保険被保険者証を、新しい雇用主に提出します。

税金関連の手続き

所得税

前職退職時にもらった源泉徴収票を新しい雇用主に提出します。

地方税

退職・再就職時、できるだけ早く両雇用主に「給与支払報告・特別徴収にかかわる給与所得者異動届出書」を記入してもらい、新しい雇用主を通じて自治体に提出してもらいます。

 

転職する外国人の方全員

機関等に関する届出

転職時に離職機関があるなしに関わらず、就労の在留資格で日本に滞在している人は、在留資格発給の根拠になっている所属機関や契約機関に変更があった場合は、入国管理局へ「所属機関等に関する届出」を提出しなくてはなりません。届出は最寄りの地方入国管理官署へ出向くか、東京入国管理局あてに書類を郵送して行います。手続きには届出書と在留カードが必要ですが、郵送の場合は在留カードのコピーを送付します。この届出は事案ごとに提出しなくてはなりませんので、転職の場合、退職時に1通、再就職時に1通の計2通提出します。

在留外国人が転校・卒業・転職・退職時に必要な「所属機関等に関する届出」とは?

 

転職後にやっておいた方がいい申請

就労資格証明書(任意)

「就労資格証明書」とは、外国人が日本で就労できることを証明する書類で、在留資格の種類とどのような活動ができるのかが記載されています。就労ビザの保持者が転職した時には、この証明書を取っておくことをお勧めします。就労の在留資格保持者は、特定の活動内容でのみ就労が許可されています。活動機関等に関する届出を提出しておけば、在留資格の許す範囲内での転職は自由ですが、在留期限が来た時にはその時点で働いている機関で在留資格の更新をしてもらう必要があります。この時、万一転職先でのポジションが本人の在留資格に適していないと判断された時には、入国管理局が更新を許可せず在留資格が無くなってしまいます。就労資格証明書を申請しておけば、転職先の業務内容が本人の在留資格に適しているかどうかも審査されますので、その転職が適切なものかどうかを知ることができます。申請手数料は900円で、最寄りの地方入国管理官署で申請できます。本人が申請する場合は、申請書・在留カード・パスポート・規格外活動証明書(あれば)を持参します。

外国人就労ビザ所有者が転職したら申請!就労資格証明書

 

まとめ

こうしてみると、実にたくさんある転職時の手続き。前職を退職後すぐに次の就職先があるかどうかによっても、大きくやることが変わってきます。どれも日本で生活するうえで重要な手続きばかり。中には期限が設けられているものもあるので、うっかり忘れてしまわないようにしましょう。

 

 

あきらことほ

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あきらことほ あきら ことほ

日本を離れて11年。帰国の度に日本のいいとこ再発見。このコラムが皆様の「日本のいいとこ発見」のお役に立てればウレシイです!

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