会社勤めをしている人にとっては、厚生年金の保険料は給与から天引きされるため普段あまり意識することもないことと思います。しかし、もし何らかの事情で仕事を失った場合には、これまでの厚生年金から国民年金に切り替えて、自分で毎月の保険料を支払うことになります。次の職も決まっておらず保険料を支払う余裕がない、免除申請をしようと思っても審査の基準となる「申請の前年」にはまだ仕事をしていて所得があったために審査に通らない……。そんな人を助けてくれる強い味方が国民年金の「特例免除」です。どのような時に対象となるのか見てみましょう。
国民年金の「失業による特例免除」を利用する意味
日本国内の企業に勤めている外国人は、基本的には会社の厚生年金に加入しているはずです。厚生年金の保険料は毎月の給料から天引きされており、しかも保険料の半分は会社が負担してくれています。ところが、何か事情があって仕事を辞めざるを得なくなった場合、そのまま厚生年金に加入してはいられないので、翌月から国民年金に切り替えて毎月所定の保険料を自分で支払っていく必要があります。経済的に苦しくて保険料の支払いが難しい場合は、申請書を提出して承認されれば保険料の納付が免除になりますが、この免除制度を利用するには免除を希望する本人や配偶者の「前年所得」が一定の基準より低くなければなりません。失業イコール「これまで継続的に入っていた収入が急に途絶える」ということで、保険料を支払えず悩んでいるのは「今この時」なのだから、いくら前年にそこそこの所得があったとしてもそれを含めて審査されると困ってしまいますよね。そこで、失業が理由で困窮しているということを証明できる書類を提出することで、通常なら審査対象となる「本人の所得」を除外して審査を行ってくれるのが、この「失業による特例免除」です。もし同居の家族がいるならその家族の所得で審査されますが、単身世帯だったり、配偶者がいても専業主婦や短時間のパート勤務であったりすれば、失業という事実があるだけで免除が通る可能性が高まることになります。この手続きさえしておけば、障害基礎年金・遺族基礎年金を受け取る資格を持ち続けることができ、不慮の事故などに備えられます。
「失業による特例免除」の対象者
これまで述べてきたように、まずは会社勤めをしていて雇用保険の被保険者だった人が職を失った場合に対象となります。失業の理由を問わず、自己都合による退職でも適用されます。それ以外にも、元々厚生年金ではなく国民年金に加入していた個人事業主などで、事業の継続が難しくなって休止せざるを得なくなったり、廃業に追い込まれるような事態が起こったりすると、当然国民年金保険料の納付も厳しくなります。そのような人も、それらの事情を公的に証明できる書類を添付して申請すれば、失業としての免除申請をすることができます。なおこの制度は、申請した年度かその前年度に退職・失業した人のみ使うことができます。免除制度での年度は「7月~翌6月」と定められており、「失業による特例免除」ではその事実が発生した前月から申請が可能になります。
「失業による特例免除」の申請方法
各種免除・猶予制度の申請場所は共通して市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口です。申請書を窓口または日本年金機構ホームページで入手して、国民年金手帳(または基礎年金番号通知書)と共に窓口に提出します(郵送での申請も可能)。印鑑も一応持参しておきましょう。それ以外に「失業による特例免除」を申請する際に必ず必要になるのは、失業したことを公的に証明する書類です。「雇用保険受給資格者証」または「離職票」などがそれに該当します。自営業などで事業の廃止や休止の届出を行っている人については、下記のような書類を提出する必要があります。
1. 厚生労働省が実施する総合支援資金貸付の貸付決定通知書の写し及びその申請時の添付書類の写し
2. 履歴事項全部証明書(いわゆる会社謄本)または閉鎖事項全部証明書
3. 税務署等への異動届出書、個人事業の開廃業等届出書または事業廃止届出書の写し(税務署等の受付印のあるもの)
4. 保健所への廃止届出書の控(受付印のあるもの)
5. その他、失業の事実が確認できる公的機関が交付する証明書などの書類
保険料の追納について
「失業による特例免除」を申請して審査に通り、保険料が全額免除になった場合は、その免除期間も老後に受け取る老齢基礎年金の受給資格期間(原則25年)に含めてもらえ、国の負担により1/2の保険料を収めているのと同等の老齢年金を受け取ることが可能になります。でも、もし経済状況が良くなり、老後も日本で過ごす見込みがあって老齢年金の金額を増やしたいと考えていたら、ぜひ後から追納しましょう。免除期間の保険料は、10年以内であれば遡って納付(追納)することができます。未納だった場合は2年間しか遡れないので、これも免除制度におけるメリットと言えます。ただし、免除が承認された期間の翌年度から起算して3年目以降は加算金がついてしまうので、追納するなら早めがおすすめです。
まとめ
職を失って経済的・精神的にダメージを受けている時に国民年金保険料まで支払う余裕はないという人が大半かと思います。単身者であればほぼ審査に通る「失業による特例免除」を利用すれば、保険料の負担に追われることなく次の職を探すことができ、まさかの時の備えも在職中と同様にキープできます。残念ながら対象者に該当してしまう人は、ぜひ申請を検討してみて下さい。
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