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会社勤めをしている間にケガや病気をしてしまった!仕事中のケガや仕事が原因で病気になったのであれば労災保険がききますが、仕事以外の原因で体調を崩して休業することになった場合には労災保険は使えません。それなのに給与が支払われなくなるほど長期間会社を休まなくてはならなくなってしまった…これは本当に困ります。もしそんな状況になってしまったときは、傷病手当金の申請を検討しましょう。休業中の収入の何割かを補償してもらうことができます。
傷病手当金とは
傷病手当金は会社員などが加入する健康保険の一部で、就業中以外のケガや病気で休業中の被保険者をその家族の生活を保障するためのものです。休業中に雇用主から給与の支給が十分に支払われない時に申請するもので、具体的には、休業中に給与の2/3相当額を最長18か月受給できます。労災と同じく申請すれば必ずもらえるのではなく、受給するためには条件を満たしている必要があります。
なお、傷病手当は従業員が雇用主を通して加入する健康保険から支払われるもので、国民健康保険にはこの制度はありません。したがって、自営業者などで国民健康保険にしか加入していない人や、被保険者の扶養に入っている家族などは給付を受けることができません。
傷病手当金の受給条件
傷病手当金を受給できるのは健康保険の被保険者のうち、次の条件を満たしている人です。
- 業務中以外の時間に発生したケガや病気が原因で休業中であること:業務由来のケガや病気の場合は、労災保険の対象となります。
- 仕事の続行が不可能であること:治療を担当した医師からの診断書や、被保険者の業務内容などを総合的に判断して決定されます。
- 連続する3日間を含む4日以上休業していること:傷病手当金は連続して3日間休み、4日目以降も休業した場合に4日目のぶんから支給され、この4日目が支給開始日になります。最初の3日間は「待機期間」と呼ばれ給付はありません。数日休んでいるけれど、そのうちどこにも3日間連続した休業がない場合は、待機期間が成立せず給付を受けられなくなります。なお3日間の待機期間とは、会社の営業日、週末や祝日など全てを含んで連続した3日間です。
- 休業期間中に雇用主からの給与支払いがないこと:給与の支払いがあってもその額が給付金よりも低い場合には、差額分を請求できます。
支給額について
傷病手当金の支給額は、支給開始日以前の連続した過去12カ月間の各月の標準均給与額を平均し、日割り計算したものの2/3が1日分として支給されます。連続した就業期間が12か月を下回る場合には、各月の標準給与額の平均と28万円のいずれか低い方が使用して計算が行われます。
傷病手当金の申請方法
傷病手当金の申請方法や必要書類は加入している保険によって多少異なりますが、ここでは協会けんぽの場合をご紹介します。
必要書類
- 傷病手当金支給申請書
- 事業主の証明:申請書の3ページ目のこと
- 療養担当者(医師)の意見書:申請書の4ページ目のこと
- 負傷原因届:外傷の場合のみ
- 第三者の行為による傷病届:交通事故等など三者行為の場合のみ
- (除籍)戸籍謄本又は戸籍抄本:被保険者死亡の場合のみ
- 本人確認書類:被保険者証の記号番号でなく、マイナンバーを記入した場合のみ
申請手順
- 勤務先に長期休業することを伝える
- 傷病手当金支給申請書をダウンロード、もしくは協会けんぽから入手。
- 申請書のうち「被保険者記入用」の箇所(1,2ページ目)を記入します。
- 傷病手当金を申請したい期間が終了してから、会社に「事業主記入用」の箇所を記入してもらいます。
- 傷病手当金を申請したい期間が終了してから、担当医師に「療養担当者記入用」の箇所を記入してもらいます。
- 症状に応じてその他の必要書類をそろえ、協会けんぽへ郵送または持参で申請書を提出、もしくは会社経由で提出してもらいます。
- 審査で支給が認められれば、申請から約1か月後に傷病手当金が振り込まれます。
注意点
- 「事業主記入用」および「事業主記入用」のページは、必ず申請したい期間が終了してから記入してもらいます。申請期間が終了する前に記入を依頼してしまうと、申請期間中に就労不可能であったこと、申請期間中に欠勤していたことと給与が支払われていなかったことが証明できないため、申請が却下されてしまいます。
- 「療養担当者記入用」箇所に医師の証明をもらうには実費で1000円、健康保険を適用して300円にかかります。
- 傷病手当金は過去2年にさかのぼって請求できます。複数月に渡って休業するときは、復帰してからいっぺんに申請する事もできますが、ほとんどの被保険者はもっと頻繁に毎月申請します。その際は、毎月の給料の締日が終わるたびに申請します。
まとめ
日本にいる間、思いがけずケガや病気をしてしまうことはよくあります。しかし時には療養が数週間、数か月に渡ってしまうことも。会社から休業の許可は出たものの給与は支給されないとなると、治療費や生活費の工面に困ってしまいます。健康保険から支払われる傷病手当金は、療養のために長期休業を余儀なくされた被保険者の生活を守る制度です。健康保険に加入していれば国籍に関係なく適用されますので、条件を満たしている人は申請しておきましょう。
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