日本の社会保障の基本理念のひとつ「国民皆保険」の下に運営される国民健康保険。日本に住所を持つ居住者は国籍に関わらず、必ずなんらかの公的健康保険に加入していなくてはなりません。企業などの従業員など雇用主を通じて社会保険等に加入している人以外は、全て国民健康保険に加入します。さて、国民健康保険に加入するともちろん保険料を支払うことになるのですが、この保険料が時としてかなりの負担に感じられることもあります。そんな時、ついつい支払いを先延ばしにしてそのまま忘れてしまいがち…ですが、これは注意!国民健康保険料の滞納が長引くと、後々大変な事態になりかねないのです。
国民健康保険の基本知識
加入条件
日本に住民登録をして居住している人すべてに義務付けられている、公的健康保険への加入。企業などの被雇用者は厚生年金、公務員は共済年金など職業や立場によって加入する保険が異なります。国民健康保険に加入するのは主に下記の条件に当てはまる人たち。外国籍の人であっても3か月以上の在留資格を認められていて同じ条件に当てはまれば、国民健康保険に加入します(一部例外を除く)。
- 自営業や農業、漁業を営んでいる人
- 退職して元の職場の保険から脱退した人
- パート、アルバイトなどをしている人で、勤務先の保険に加入していない人
保険料の計算は前年の所得に基づく
国民健康保険の保険料は、前年1月~12月の収入に対する確定申告で最終確認したものを元に算出されます。3月に確定申告が終わると、4月5月中に各家庭の健康保険料の算出が行われ自宅に納付書が届きます。これを6月から翌年3月の間に10回に分けて納付します。
保険料を支払わないとどうなるのか
国民健康保険の保険料を滞納すると住所地の自治体からの督促が始まります。また、時期は各自治体によって多少異なりますが、滞納を続けていると段階的に厳しい処置も受けることになります。具体的には次のような対応がとられます。
1.書面や電話での督促(滞納の翌月以降)
国民健康保険料を滞納すると、翌月から督促状が住所地に送られてきます。督促状には保険料の納付が確認できなかった旨と、指定された期日までに納付するようにという催告分が記載されています。この時点で納付をしておけば、その後特に問題は起きません。しかし滞納したままにしていると、自治体の職員が電話や自宅訪問で督促を行います。
2.短期被保険者証の交付(6か月以上の滞納)
6か月以上の滞納になると、国民健康保険の「短期被保険者証」が送付され、被保険者証の有効期限を短縮されてしまいます。「短期被保険者証」は医療機関で提示すれば通常どおり3割の負担で医療サービスを受けることができますが、数か月の有効期間しか認められていません。
3.被保険者資格証明書の交付(1年以上の滞納)
滞納が1年を超すと、短期被保険者証の代わりに「被保険者資格証明書」が送付されます。資格証明書は被保険者証とは違い、国民健康保険の資格を持っている旨を証明するためだけのものです。医療機関で提示しても3割負担での診療は受けられず、全額負担での診療になります。理屈上は国民健康保険の資格がありますので、後に保険負担分の還付を請求することはできますが、未納があればまず還付は受けられません。
4.高額医療費の払い戻しが受けられなくなる(1年半の滞納)
滞納が1年半を超えると、保険給付が完全にストップします。診療時の費用を全額自己負担はもちろん、一定額以上の医療費がかかった際に受けられる高額医療費払い戻しが受けられなくなります。つまりケガや病気になって入院するなど、高額な医療費が払ってもなんの補償も受けられなくなってしまうのです。
5.財産の差押え(1年半以上の滞納)
それでも滞納を続けていると自治体から差押えの通知書が届き、銀行口座の凍結、給与の差押え、家財道具などの差押えが執行されます。対象となる金額は滞納している保険料の合計だけでなく、滞納機関に課せられる遅延金も含まれます。
本当に保険料が払えない時はどうする?
本人の意思に関わらず、日本に住所を有して3か月以上滞在していれば必ず加入しなくてはいけない国民健康保険。保険料は収入に応じて算出されますが、なかなか高額です。しかも前年の収入を基準にしているため、例えば会社都合で突然解雇になった場合など経済的にひっ迫している時には、生活が困窮して本当に保険料を支払うことが難しい場合があります。もしなんらかの事情で保険料の支払いが難しいという場合には、滞納するのではなく必ず住所地の市区町村役所の保険年金課等に相談に行きましょう。状況によっては保険料の減額を受けられる場合があります。
まとめ
国民健康保険の保険料は前年の収入を元に計算されるため、例えば去年は収入があったけれど今年は失職して収入が激減してしまったなどという場合には、保険料の支払いが困難になる場合もままあります。そんな時、つい支払いを先延ばしにして滞納してしまいがちですが、これはできるだけ避けたほうがよさそうですね。もし支払いが困難な時は、迷わず住所地の市区町村役所に出向いて相談をしましょう。くれぐれも督促状や役所からの問い合わせを無視し続けないようご注意を!
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