photo by BBG
仕事中や通勤途中にケガをした、仕事が原因で病気になって医療機関にかかった場合、その治療費や薬代は健康保険ではカバーされません。これらの費用を補償するのは労災保険。健康保険が3割負担なのに対して、労災保険は認定されれば全額補償となるので、実は健康保険よりも手厚いのです。労災保険の補償の中でも、ケガや病気の治療にかかった医療費に対するものは「療養補償給付」と呼ばれます。労災保険申請の中でも最もメジャーなものですが、申請の際にはいくつか気を付けておくべき重要な点があります。
労災保険を申請できる人
労災保険の適用を受けられるのは、雇用されて働いているなど「労働者」としての条件を満たしている人です。また、労働者が業務起因のケガや病気をした時に労災保険の申請ができるのは、次の人や団体になります。
- 労働者本人
- 労働者の家族
- 雇用主
労災の治療は労災保険指定医療機関へ
労災の治療費を請求するためには、できれば最初から労災保険指定の医療機関へかかるのが一番の近道です。労災指定病院であれば、あらかじめ書類を準備して行くことで治療費を全額カバーしてもらうことができ、支払いが発生しません。しかし、指定病院以外で治療を受けると労災がおりないというわけではありません。労災保険指定ではない医療機関で治療を受けた際には、いったん治療費を全額負担し、後日労働基準監督署へ労災保険の申請を行い、かかった治療費の払い戻しを受けることができます。また、労災保険指定病院で治療を受けるか否か、業務中の災害であるか通勤中の災害であるかで、手続きの方法や準備する請求書の種類が異なります。
※指定病院で治療を受ける場合も、そうでない医療機関にかかる場合も、必ず治療前に労働災害であることを受付や医師に伝えておくことが重要です。
申請に必要なもの
労災保険の給付請求手続きには次の書類が必要になります。給付請求書は地域の労働基準監督署でもらえるほか、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードすることもできます。
労災保険指定医療機関にかかる場合
- 療養の給付請求書:様式第5号(業務災害の場合)または様式第16号の3(通勤災害の場合)
※診療の際に医療機関へ提出
労災保険指定でない医療機関にかかる場合
- 療養の給付請求書:様式第7号(業務災害の場合)、または様式第16号の5(通勤災害の場合)
- 医療機関で支払った治療費の領収書、請求書、担当医師の証明などの証明書類(療養の給付請求書に添付)
※後日、最寄りの労働基準監督署へ提出
労災保険申請の手順
労災保険指定医療機関にかかる場合
- 労働災害が起こったことを雇用主に報告
- 療養の給付請求書に記入し、雇用主の証明をもらいます
- 労災保険指定医療機関で労災であることを告げ、書類を提出、治療を受けます
- この後は、医療機関から保険者へ給付請求が行われるため、労働者が行う作業はありません
労災保険指定でない医療機関にかかる場合
- 労働災害が起こったことを雇用主に報告
- 療養の給付請求書に記入し、雇用主の証明をもらいます
- 労災である旨を伝えて治療を受け、いったん治療費を全額支払います
- 医療機関から支払った治療費の領収書を受け取ります
- 療養の給付請求書に治療費の領収書を添付したものを、労働基準監督署へ提出します
- 労働災害であるかどうかの審査が行われ、労災認定がおりれば支払った治療費が払い戻されます
注意点
- 原則として、労働災害が原因のケガや病気には健康保険を使うことは禁じられています。必ず治療前に労災であることを医療機関に伝えましょう。
- 急な事故など、事前に療養の給付請求書を準備することが難しい場合は、治療時に医療機関に相談しましょう。労災指定病院であれば、後日書類を提出することを伝えることで、当日の治療費の支払を免除してもらえることがあります。その場合、給付請求書の提出期限を必ず確認しておきましょう。
- 労災保険は労働基準監督署が労働災害であると認定しなければ、給付がおりません。
- 労災の給付請求に雇用主の証明を記入する欄がありますが、雇用主にこれを拒否された場合は、協力を得られなかった旨を記入すれば労働者本人のみで申請することができます。ただし、この場合労災認定の審査にかかる時間が長くなるため、必ず一度は雇用主に協力を求めることが重要です。
- 労災保険の給付申請には期限が設けられています。療養補償給付に関しては、療養に要する費用を支払った日、または費用の支出が具体的に確定した日の翌日から起算して2年以内に申請する必要があります。
まとめ
仕事が原因のケガや病気、ついうっかり健康保険を使ってしまいそうですが、労災に健康保険をつかってはいけないことを知らない人は意外と多いのです。労災が原因のケガや病気の治療には、必ず労災保険を使いましょう。労災保険指定の医療機関であれば、書類を提出するだけで医療費免除になるので、手続きもとても簡単です。指定病院以外で治療を受けた場合も、後日請求書と治療の証明書を提出するだけと、申請はいたって簡単ですよ。
関連記事
WHO世界最高評価!外国人の国民健康保険加入制度とは
病院に行きたいけれど…健康保険証が届く前にけがや病気になったら
日本を出国する際はお忘れなく。国民健康保険の脱退手続きについて
引越しする時には忘れずに!国民健康保険の住所変更手続き
社会保険から国民健康保険への切り替え方法と任意継続
日本で病気やケガをしたら…自分の医者は自分で選ぶ!?
外国人も加入必須!国民健康保険を支払わないとどうなる?
国保加入者は渡航先での医療費が70%返ってくるってホント?
保険料が高すぎる…!国民健康保険料の減免申請
春は花粉の季節…日本人が実践する花粉症対策いろいろ
大人の歯科治療も国保でカバー?日本で歯医者へ行くときは?
仕事が原因のケガや病気を補償?労災保険の基礎知識
ケガや病気でやむを得ず休業…そんなときは健康保険の傷病手当金
【休業補償給付編】仕事中のケガで休んだ場合の収入補償?労災保険の申請方法